2024年1月投開票の台湾総統選で、与党・民進党と野党・国民党が接戦を繰り広げている。対中強硬路線を続けている民進党に対して、国民党は中国との融和を模索している。中国による侵攻リスクにさらされる中、台湾の人々はどちらの政党を選ぶのか。政治ジャーナリストの清水克彦さんが現地からリポートする――。
台北市にある台湾の総統府。
写真=筆者提供
台北市にある台湾の総統府。

「ただの海外の選挙」と考えてはいけない理由

筆者は本稿を台北市内のホテルで書いている。日本の政治も、自民党・安倍派をはじめとする政治資金パーティー収入裏金疑惑で混迷の度合いを増しているが、台湾総統選挙もまた、2024年1月13日の投開票日を前に、誰が勝つのか予断を許さないまま、終盤戦を迎えようとしている。

台湾総統選挙を「所詮は海外の選挙」と考えてはいけない。誰が総統に選ばれるかで、台湾統一を「核心的利益」(どんな代償を払ってでも得たい利益)とする中国が、平和的に統一を目指すのか、それとも軍事侵攻をしてでも奪おうとするのかが見えてくるからだ。

もし中国が台湾に軍事侵攻すれば、中国軍のシンクタンク軍事科学院の中将が共同通信の取材に「台湾侵攻と当時に沖縄の尖閣諸島奪取に出る可能性がある」と言及したように、沖縄本島や南西諸島の島々も無傷では済まない。

極端に言えば、今回の台湾総統選挙は、日本の国土に、中国軍のミサイルが降ってくるか否かの試金石となる選挙と位置づけられるかもしれない。

3人の候補者の決定的な違いは「対中政策」

まず、3人の候補者について簡単に整理しておこう。

【図表】台湾総統選の3人の候補者
筆者作成

頼清徳氏、侯友宜氏、柯文哲氏の3氏ともに、原発政策を除けば、経済政策などに大きな違いはない。際立つのは、やはり中国との関係である。