元理事長にとって学長は「単なる傀儡」

日大では文字通りトップが暴走した。相撲部コーチを振り出しに、トップにまで上り詰めた田中英寿元理事長だ。2021年まで13年間にわたって長期独裁体制を築き、最後には脱税容疑で逮捕されるという不祥事を引き起こした。

田中氏にとっては執行部トップの学長は操り人形のような存在だった。2018年に日大アメフト部の「悪質タックル問題」が起きると、矢面に立たされた当時の学長はメディア上で「単なる傀儡かいらい」との烙印らくいんを押された。

田中体制との決別を掲げて理事長に就任したのが作家の林真理子氏だ。にもかかわらず薬物事件をめぐって「ガバナンスが機能不全に陥っている」などと批判され、四面楚歌そかの状況下に置かれている。

2022年7月に林体制が発足した当時、日大は外部人材の起用をアピールして生まれ変わると宣言した。ガバナンス改革をうたったというのに、2年目で「ガバナンスが機能不全」と指摘されるとは……。

24人の理事のうち独立性があるのは8人だけ

確かに日大理事会の中で外部人材は増えた。とはいえ実態は理想からは程遠い。独立性の高い学外出身者が理事会の大半を占めていなければ、監督と執行が分離しているとは言いがたい。

現在の理事会を点検したところ、24人の理事のうち独立性があるとみられるのは「校友」と「学識経験評議員」という枠で選ばれた8人にすぎない(図表1参照)。残り16人の大半は学長や副学長、教員、職員らだ。立場的に「執行部をチェックする」という役割を担えない。