スタンフォード大理事長の報酬は「ゼロドル」

本当に独立性があるのは、自分の知見を生かすために事実上のボランティアとして理事を務めている人物だ。もちろんほかに本業を持っており、理事として稼ごうとは思っていない。

海外に目を向ければお手本はある。

例えば、シリコンバレーのど真ん中に位置する米名門私大スタンフォード大学。現在の理事長ジェリー・ヤン氏は卒業生であると同時に、米老舗ネット企業ヤフーを創業した億万長者でもある。

ヤン氏は理事長としていくら報酬をもらっているのか? 文字通りゼロドルだ。日大理事長として2400万円の年俸を得ている林氏とは天と地ほどの違いがある。

ヤン氏だけではない。現在の理事32人のうち、リチャード・サラー暫定学長を除く31人全員が無報酬で働くボランティア。中心は寄付金などで大学に多大な貢献をした卒業生だ。

要するに、理事会内で独立性を欠く学内出身者は学長1人だけということになる。

「理事はボランティアで働く」は当たり前

スタンフォード大のウェブサイトを見てみると、理事会の理念や活動について詳しく説明されているものの、報酬については何も記載されていないということが分かった。同大に直接問い合わせてみたところ、以下の回答が返ってきた。

〈理事会メンバーは理事長も含めて全員がボランティアです。従って無報酬で働いています。各理事が理事として活動中に発生した旅費・宿泊費・食費についても大学側は一切補助していません〉

理事がボランティアであるということはあまりにも当たり前であるため、大学としてはあえてウェブサイトの中で触れていなかったようだ。

スタンフォード大学のフーバータワー
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ボランティアだからといって仕事が楽なわけではない。スタンフォード大の理事は1年に5回以上のミーティングに参加しなければならないし、個々のミーティング前には2~6時間かけて事前に資料を読み込むよう求められる。

大学の試算によると、個々の理事は年に最低でも20日間を理事活動に費やさなければならない。通常のミーティングに加えて各種委員会・作業部会に参加するほか、寄付金集めなどでも大きな役割を果たすよう期待される。

理事会にとって何が重要な仕事なのか。大学のウェブサイトは「理事会にとって大きな権限の一つは学長の任命権」としたうえで、「理事会は学長に対して大幅な権限移譲を行っており、大学経営全般を任せている」としている。