日本大学本部などに東京地検の強制捜査

ついにと言うべきか。日本大学の本部などに東京地検特捜部の強制捜査が入った。日本大学が発注した医学部付属板橋病院の建て替え工事をめぐり、日大の理事が大学側に数億円の損害を与えた背任の疑いという。日大本部(東京都千代田区)や学校法人トップの田中英寿理事長の自宅、学内の理事長室、関連会社「日本大学事業部」(世田谷区)などを家宅捜索した。

暗い部屋で封筒に入った札束を渡す人、受け取る人
写真=iStock.com/Atstock Productions
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報道によると、工事発注に絡んで、2億円超の資金が大阪市の医療法人グループの関係先に流出、医療法人グループ側から約1億円が日大理事側に還流した疑いがあるとされ、田中理事長の関与の有無などが調べられているという。日大の田中理事長を巡っては月刊誌「FACTA」などが長年にわたって繰り返し疑惑を報じていた。

田中理事長は1969年に日大を卒業、職員となり、相撲部コーチ、相撲部監督などを歴任した。1999年に大学の理事に就任すると2002年には常務理事となり、2008年には理事長に就任。以来、13年にわたって理事長を務めてきた。今回の強制捜査で田中理事長は関与を否定していると報じられているが、果たして真相はどうなのか。

「理事長独裁」を許してしまう制度的問題

日大に限らず、大学など学校法人の理事長は絶大な権限を持つ。株式会社や財団法人の「定款ていかん」に相当する規定を学校法人では「寄附きふ行為」と呼ぶが、日本大学の寄附行為には、こう書かれている。

「理事長以外の理事は、この法人の業務について、この法人を代表しない」

日大は職員が3700人以上、教員が専任だけで約3400人いる大企業並みのマンモス組織で、理事も36人いるが、法人を代表できるのは理事長だけとなっているのだ。決定は理事会が行うことになっているが、「通常業務の範囲に限り、別に定める常務理事会が決定し執行することができる」となっており、実質は常務理事会でほとんどのことを決めていたと見られる。理事長の補佐役である常務理事についてはこう規定されている。

「理事のうち若干名は、理事長の推薦により理事会の議を経て常務理事となる」

つまり、理事長が推薦しなければ常務理事にはなれないわけで、事実上理事長が指名する仕組みなのだ。もちろん、職員の人事評価は理事長が一手に握るから、理事長に逆らえる職員などいるはずもない。大学をはじめとする私立の学校法人は、制度的に「理事長独裁」を許してしまう構造になっているのだ。