研修で夏休みがつぶれてしまう教員たち
首都圏で市立中学校に勤務する40代のAさんは、指を折って数え始めた。
「7月に2回、8月はこの日と、ここと……」
みるみる片手の指が埋まるのは、Aさんがこの夏休みに参加する研修の数である。短縮傾向の夏休みはひと月ほどなのに、研修だけで6日間つぶれてしまう。その研修、役に立ちますか? と尋ねれば、「う~ん」と苦笑い。
「でも、コロナ禍だからか、今年は(研修の数が)少ないほうです。先生たち、この状態で、免許更新時の研修が入ってきたら地獄ですよ。僕はこの研修をやりたくないがために、みんながやりたがらない主幹になりました」
主幹、副校長、校長といった役職に就けば回避できるからだ。Aさんは数年前に主幹になった。
現場から不満の声が上がる「免許更新制」
更新前に講習を受けないと失効する教員免許更新制について、萩生田光一文部科学相は8月23日、早ければ2023年度から廃止する方針を示した。
2009年度に教員の質の向上などを目的に導入された免許更新制は、10年ごとに期限前2年のうちに大学などで30時間以上の講習を受けることを義務付けられている。
文部科学省が5日に公表した調査結果によると、講習時間や受講料に負担を感じると回答した教員は8割を超えた。受講が学校での授業がない夏休みに集中するうえ、約3万円の受講料はすべて自己負担。以前より学校現場から不満が出ていたという。
教師に不人気だという主幹になってまでして免許更新時研修を回避したAさんは、その理由をこう語ってくれた。
「一番の理由は、自分で申し込みをする手間です。30時間を埋めるべく研修を探してみても、内容はとても概念的でつまらない。
実践的でいいなと思うものがあっても、定員があってすぐに埋まってしまし、正直言って聴講したいものはほぼなかった。それを3万数千円も自腹を切って、興味のない話を聞くわけです。お金と時間の無駄でしかない」