激務に苦しむ教員の背景にある「不登校問題」

Aさんも過酷な20代、30代を過ごした。朝6時に学校へ。まず、黒板への落書き、トイレの状態など学校の見回りをする。子育てをしている教員ができないことを買って出た。そこから授業準備をし、部活動が終わると夜7時。

そこから提出物や、生徒が授業の感想などを書いた学習カードをチェックする。ただ単に判子を押せばいいわけじゃないので、一枚一枚40人分を読んで評価をしていくと2時間くらいはあっという間だ。

体育祭、文化祭など行事の準備がある期間であれば、帰宅は11時。食事と入浴を手早くやって就寝するのは12時過ぎ。睡眠時間は4~5時間だった。

先生たちの多忙さの背景に、児童生徒の不登校がある。文部科学省が昨年10月に公表した「問題行動・不登校調査」によると、2019年度に不登校が理由で小中学校を30日以上欠席した児童生徒は18万1272人で過去最多を更新した。

増加は7年連続で、内訳は小学校が5万3350人、中学校が12万7922人。全体の児童生徒に占める割合は、小学校で0.8%、中学校で3.9%だった。

ひとりで座り込む小学生男児
写真=iStock.com/takasuu
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この割合が、Aさんの学校は約6%。各クラスにひとり以上存在する。Aさんは「その子たちへの支援も僕らの重要な仕事。午後から登校する子に別室対応もする。安全管理上ひとりにはしておけません」と明かす。

学校に行けないというデリケートな問題に、教員は神経をすり減らす。校長や管理職は「学校全体で生徒を見ています」と保護者に説明するが、実際は担任が責任を負うことになる。

「不登校の生徒への対応を他の先生にお願いして、研修に行くこともあります。行ったはいいけど居眠りしそうになるような何ら意味のない研修のほうが断然多い。俺は何をしているんだろうと落ち込みます」(Aさん)。

人手不足に加えて「研修疲れ」で疲弊

「教員の質を上げたいのなら、研修よりも、教師を増やしてほしい。圧倒的に人手が足らない」

そう訴えるAさんの学校の平均年齢は35歳。今年は女性教員3人が産休に入ったため、20代の代替え教員が加わった。キャリア3年以内の若手が十数人もいる。Aさんが「ママになる女性教員は当然応援されるべき存在です」と話すように、現場は現状に対応しようと必死だ。

過労死ラインと言われる多忙な教員生活に、「研修疲れ」が拍車をかけている。子どもの詰め込み教育が問題視されるなか、教員に対しても長年同じやり方を通しているように映る。本人が興味を持てない情報を充填するだけでは、指導力アップに直結するとは思えない。

2020年度にスタートした新・学習指導要領で「主体的な学び」が強調されているにかかわらず、教師に対しては受動的な学びに終始していないだろうか。児童生徒も、教師も実は同じ問題を抱えているのだ。