「内容が実践的ではなく、本当につまらない」

しかも、最初の10年目、つまり多くの教員が30代前半から中盤に受ける免許更新時研修は「中堅教諭等資質向上研修」も受けなくてはならない。Aさんによると、こちらは無料ではあるが、かなりの量だ。

「校内で30時間、校外で18時間あって全部受けなくてはいけません。一般企業に3日間通う課題別研修というのもあります。僕は食品関係の企業でしたが、中身はホームページを見ればわかる程度のもの。学校教育や子どもの生活と何ら関係ない。外の空気を感じられるいい経験にはなりましたが」

ちなみに、Aさんが同じ学校ですでに研修を受けた同僚に尋ねたところ、質問した4人全員が免許更新制に反対だった。

「他にもいっぱい研修を受けている」
「内容が実践的ではなく、本当につまらない」
「家庭を犠牲にして通った。本当にしんどい」

不満の声ばかりだったという。

「すさまじい研修疲れですよ。みんな夏休(夏休み)が5日間取れない状況が、ここ数年続いている。ICT(教育)対応など、仕事は増えるばかりです」とAさんは顔をゆがめる。

授業のない夏休みでも、実は先生たちは忙しい。コロナ禍の今年は地域によってはなくなったがプール当番、日直、部活動の指導や大会引率などさまざま業務がある。

ハードな教員生活でスキルアップをする暇がない

茨城県の市立中学校で教壇に立ち、少年サッカークラブで指導もしている40代のBさんは、Aさんとは少し違う意見だ。

「泊まりがけの講座で、全国の方々と情報共有もでき、楽しく実りある時間を過ごせました。車の運転やサッカーの審判資格も適正があるかを毎年確認されます。審判はクーパー走や筆記テストがあり、ルールブックを読み返し、上級審判員の方から話を聞ける。知識だけでなく、サッカーのとらえ方などすごく勉強になりました」

しかしながら、30代までは「目の前のことに追われるばかりだった」と、Bさんは言う。朝6時過ぎに学校へ行き、放課後は部活動や生徒指導、保護者対応で学校を出るのは夜10時を回った。

窓辺で頭を抱える男性
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土日祝日は、試合や大会。子育ては妻に任せきりというなかで、自分の時間を確保して何かを追究する気になれなかった。年齢を重ね、部活動の主顧問を引き受けずにすむようになってから、さまざまな分野へ目が向くようになった。

「教員の世界は、身銭をきってスキルアップしたり、見識を広げよう! という方は少ないように感じます。そうならないのは、やはりハードすぎる教員生活だと思う」とBさんは嘆息する。