皇室にとって久々の慶事にも違和感が拭えない
父親は背中で泣いていた。
秋篠宮眞子さんの結婚が決まったとニュースで知ったとき、小津安二郎の映画『晩春』(1949年公開)のラストシーンを思い出していた。
妻に先立たれた56歳の大学教授(笠智衆)が、年頃を過ぎても結婚しない一人娘(原節子)を説き伏せ、ようよう結婚することを承諾させる。
「お父さんとこうしているときが一番幸せなの」という娘に父親は、「そりゃちがう」といい、結婚は2人でつくり上げていくものだ、それが人間生活の歴史の順序というものだ、「幸せは待っているものではなく、つくりだすもんだよ」といい含める。
ようやく結婚した娘を東京駅まで送った父親は家に戻り、籐椅子に座ってリンゴをむく。皮が足元に落ち身体が前に傾く。
小津は笠に、そこで号泣しろと命じたそうだ。だが笠は、それはできないと拒んだという。笠が正しかった。寂しさと哀しさがない交ぜになった父親の孤独が、観る者の心に沁みわたり、深い余韻を残した。
もちろん秋篠宮は孤独ではない。奥さんの紀子さん、次女の佳子さん、長男の悠仁さんもいる。
だが、紆余曲折さまざまなことがあった長女・眞子さんの結婚は、父親の秋篠宮にとって感慨深いものがあるはずである。秋篠宮も今年の11月で笠智衆が演じた大学教授と同じ56歳になる。
だが、失礼なことをいわせてもらえば、皇室にとって久々の結婚という慶事であるというのに、その公表の仕方やタイミングに、やや違和感を覚える。
どのメディアもなぜ堂々と発表しないのだろう
私が見た限りでは読売新聞が一番早く「【独自】眞子さまと小室圭さん、年内に結婚…儀式は行わない方向で調整」(9月1日5時00分)と報じた。
だが、情報源は「関係者への取材で分かった」とあるだけ。朝日新聞、NHKも後を追い、朝日新聞は9月2日付朝刊一面で、「眞子さま 年内結婚で調整」と書いている。朝日も「関係者の取材で分かった」というだけで、新聞記事に必要な5W1HのWhoが抜け落ちているのだ。
推測するに、宮内庁筋からのリークだと思うが、なぜ、堂々と発表しないのだろう。秋篠宮が自分で「娘の結婚が決まった」といわないのだろうか。
9月5日の東京パラリンピックの閉会式に秋篠宮が出席した。辞任が決まった菅義偉首相と並んで座っていたが、心中穏やかではなかったのではないか。