日本大学のガバナンスはどうなっているのか。問題はアメフト部の危険タックルだけではない。日大は今年3月、英語の非常勤講師15人を解雇。プレジデントオンラインではその1人の声を報じたが、日大の態度は変わらず、講師8人は6月22日、日大に地位確認を求める訴えを東京地方裁判所に起こした。提訴を避けるため、講師たちは日大と団体交渉を重ねてきたが、大学本部のトップである田中英壽・理事長と人事の責任者だった内田正人・元アメフト部監督の2人は、一度も姿をみせなかったという。これでいいのか――。
提訴のため東京地裁を訪れた日大の非常勤講師たち(撮影=田中圭太郎)

非常勤講師8人が日大を提訴

6月22日午後2時過ぎ、日本大学を解雇された非常勤講師と弁護団が東京地方裁判所を訪れた。持ってきたのは書き上げられたばかりの訴状だった。

前夜、首都圏大学非常勤講師組合と日大との間で3カ月ぶりの団体交渉が行われた。しかし、違法な解雇だと訴える講師らの主張を、大学側はまったく聞き入れなかった。

その結果、解雇された講師のうち6人と、一方的に担当授業を削減された講師2人が法廷闘争を決意。日大を相手取り、解雇や授業の削減は違法かつ無効であるとして、地位確認を求めて東京地方裁判所に提訴した。

同日、原告団は記者会見を開き、危機管理学部とスポーツ科学部から雇い止めされた原告団長の真砂久晃さんが「声明」を読み上げた。以下はその抜粋だ。

「学びと研究の共同体を破壊する大学本部」

「日本大学を提訴することは、私たちにとって、苦渋の選択でした。原告団の中には、今でも日大の学生を教えているものが何人もいます。それでなくても、アメフト問題で傷ついた学生たちが、私たちの行動で、また心を痛めるのではないかと思うと、いたたまれません」

「日本大学には、愚かな人間はほとんどいません。大部分の教職員は思いやりのある、愛すべき人々です。私たちは日本大学を愛しています。ですから、私たちが今回、異議を申し立て、是正を要求するのは、日大の中枢部に寄生し、非常勤講師を良心の呵責もなく使い捨て、教職員をこき使って何食わぬ顔をしているわずかの人々に対してなのです」

「私たちが糾弾したいのは、この学びと研究の共同体を破壊する大学本部です。彼らは、学生を守ると述べていますが、非常勤講師を含む教職員を人間扱いしない人に、学生が守れるはずがありません」

真砂さんが糾弾する大学本部のトップは田中英壽理事長、講師を解雇した当時の人事の責任者は、危険タックル問題で職を追われたアメフト部前監督の内田正人氏だ。2人とも講師たちとの団体交渉に出席したことは一度もなく、責任者として解雇の理由を語ったこともない。外部からの指摘に対してしかるべき人物が明確な説明をしない点は、アメフト部の問題と同じだ。