非常勤講師を全員解雇して、専任教員に穴埋めさせる

さらに、2015年7月に学内に通達された文書「教学に関する全学的な基本方針」では、各学部に授業科目数の2割削減を目指すことと、専任教員の担当講義数を1人週5コマから8コマに見直すことが盛り込まれていた。この通達が実施されると、のべ3600人以上の非常勤講師の授業がなくなることになる。

具体的には、2017年現在、総授業コマ数は1万9828コマ(医学部と歯学部を除く)で、そのうち2714人の専任教員が1万2418コマ(ひとり平均4.6コマ)、のべ3643人の非常勤講師が7410コマ(ひとり平均2.0コマ)を担当している。大学本部が掲げる授業科目数の2割削減が実現されると、3965コマが削減されるため、それらがすべて非常勤講師の担当科目に集中すると、のべ1950人分、実数では1000人近い非常勤講師が雇い止めされることになる。

さらに、専任のコマ数が5コマから8コマに増えた場合、計算上は専任だけですべての授業を担当できるようになる。このため講師たちは、大学の目的は、のべ3600人以上の非常勤講師を全員解雇することだと疑うようになった。

2015年7月に学内に通達された文書「教学に関する全学的な基本方針」

3カ月ぶりの団交でみせた大学の態度

講師たちの疑念は、提訴の前夜、6月21日に、3カ月ぶりに開かれた首都圏大学非常勤講師組合と日大の団体交渉で確信に変わった。

日大で非常勤講師15人が担当していた英語の授業は、現在、語学学校に委託されている。前回の記事でも詳報したが、大学の授業を語学学校に委託という形で「丸投げ」することは、学校教育法に違反する。大学側は3月の団体交渉で、「専任教員が授業を観察しているので丸投げではない」と主張した。だが、観察という名目で専任教員が授業に介入すれば、今度は労働者派遣法違反の「偽装請負」となる恐れがある。

組合側は、専任教員が病気などで不在の場合の対応について聞いた。すると日大は「休講にはしない」という。これでは一時的に「丸投げ」の状態になる。また専任講師が語学学校の講師と一緒に授業をすることもあるという。これでは「偽装請負」だ。

これでは違法な状態を黙認することになるはずだが、大学側はこう言い放った。

「それはあなたたちには関係ない」

大学側は現在の英語の授業について聞かれるのは「筋違いだ」と主張。その理由を次のように述べた。

「まず先に、非常勤講師を辞めさせたのです。授業をどうするかは、その後の話です」

つまり、危機管理学部とスポーツ科学部の英語の非常勤講師を全員辞めさせることが前提であり、その先の対応について説明するつもりはない、ということだ。