防衛財源の確保がなぜかNTT法の廃止の話に
特にKDDIとソフトバンクが、NTT法の見直しについて危機感を募らせている背景にあるのが、2020年に行われたNTTによるNTTドコモの完全子会社化だ。
そもそも、NTTグループは分離し、競争させていくというのが閣議決定だった。しかし、NTTドコモに対しては「NTT法には含まれない」(当時の澤田純社長)として、しれっと完全子会社化を進めてしまった。
髙橋社長は「2020年に、料金値下げの議論のどさくさに紛れて、NTT分離の趣旨に反してドコモの完全子会社化が審議会もなく通された」と不満を隠さない。
KDDIやソフトバンクは「法律に書いていないからと強行突破するのはおかしい」として、今回のNTT法の見直しについても「NTT東西とNTTドコモを一緒にしないという口約束ではなく、しっかりと法律に書いておくべきだ」と主張する。
今回のNTT法の見直しは、自民党による「防衛財源の確保」を目的に、政府が保有するNTT株を売却できないかという話が発端であった。NTT法で政府がNTT株を保有する義務が存在するため、株を売却するにはNTT法を改正する必要がある。
しかし、時が経つにつれ、NTT株の売却話はうやむやとなり、なぜか「NTT法の廃止」だけが残ったのだ。
法廃止ではなく一部改正で事足りるはず
KDDIやソフトバンク、楽天モバイルとしては、自民党のプロジェクトチームが一方的に2025年の通常国会までにNTT法を廃止すると決めてしまうことに納得していない。
NTTが有する「特別な資産」は国民のスマートフォンに対する料金やサービスを決める重要な要素であるため、「企業や国民の声を十分聞いていない」(髙橋社長)として、「オープンな場での議論」を求めているのだ。
NTTとしては「社名の変更」や「研究成果の普及義務の撤廃」などを求めているが、これに対して、KDDIらは賛成している。
宮川社長は「NTT法の一部改正で済むところをなぜ廃止にしなければならないのか。その理由を考え始めてしまっている」と語る。
宮川社長としては「2025年を目処に議論するというのなら、一切引くつもりはないし、とことん付き合う。2025年までにまとまるとは思っていないし、10年かかろうが20年かかろうが、議論に付き合うし、次の社長にも必ず伝言する」と意気込むほどだ。