法律を作る立法府だからこその性質
現在でも、官僚の用意した答弁書をそのまま読むような大臣は多いが、スマホが解禁されると、他人が用意した文章を、それもリアルタイムに用意されたものを読み上げる懸念が強まるというわけだ。
実際に、衆議院ではタブレットやノートパソコンを委員会で使う際にも、外部との通信を禁止するなどの条件がついており、使い勝手には問題があると言われている。
このように、国会では様々なことが規則や前例、過去の申し合わせによって縛られ、柔軟性に非常に欠けると言われている。
また、ルールを変える際にも、様々な事案を想定して、与野党各党が問題ないと合意しなければならず、簡単ではない。
それは、日本において守らなければならない最大のルールである、法律を作る立法府だからこその性質だと言えるだろう。
コロナ禍で浮上した「オンライン審議」の是非
国会のデジタル化が進まないということはこれまでもあった。
その1つが、コロナ禍で浮上したオンライン審議の是非だ。
新型コロナウイルスが流行した当初、国会議員が密集する本会議などではパンデミックが起こる可能性があるとして、オンラインで審議をできるようにすべきではないかという意見が出た。
世間ではオンライン会議などが一般的になっており、国会にも同様の仕組みを導入するのは時代に即したものでもある。
しかし、当時立ちはだかったのが憲法上の問題だった。
憲法56条では「総議員の3分の1以上の出席がなければ、議事を開き議決することができない」とあり、この「出席」にオンラインを含めるかどうかが争点となったのだ。
議論では、「出席」を議員本人が議場に足を運んで会議に参加することと限定的に捉える「物理的出席説」と、議員本人が表決に加わっていれば、議場にまで足を運ばずにオンラインで参加しても良いとする「機能的出席説」などが出た。
物理的出席説に立つならば、オンライン審議を可能とするためには憲法改正が必要となる。一方で、機能的出席説に立つなら、憲法改正は不要となり、衆議院や参議院の規則を多少変えれば対応可能となる。