「出席」をどう捉えるかをめぐり、憲法学者まで登場

たかが、「出席」をどう捉えるかという話であるが、その対象が憲法であるために、憲法学者まで登場して解釈について検討することとなった。

最終的に、衆議院の憲法審査会から出された報告書では、「出席」について「原則的には物理的な出席と解するべきではある」としながらも、「緊急事態が発生した場合等においてどうしても本会議の開催が必要と認められるときは、その機能に着目して、例外的にいわゆる『オンラインによる出席』も含まれると解釈することができる」とした。

なんとも回りくどい言い方だが、要するに、緊急時にはオンライン出席が認められるということだ。

しかし、このように「出席」についての議論が続く中で、現実のコロナ禍に対応しなければならない国会では、本会議に出席する議員を奇数番目や偶数番目に制限する「間引き」を行って密を避けることが先に決まってしまい、結局、オンライン審議についての具体的な制度設計はなされないまま今に至っている。

法律について定める立法府だからこそ、憲法について厳格に議論することは大切ではあるが、臨機応変な対応が苦手であることが露呈した出来事でもあった。

国会議事堂
写真=iStock.com/Mari05
※写真はイメージです

予算案は「原案のまま成立」が慣習化

ここまで、国会とデジタル化についての問題を見てきたが、それ以外にも国会では規則や前例でがんじがらめになり、改革が進まないものがある。

それは国会審議そのものだ。

国会では毎年1~3月にかけて、政府から提出された来年度の予算案を議論する。

政府が実施する1年間の政策の方向性について予算という形で示されたものであるため、予算審議は国会の中でも非常に重要なものとして位置づけられている。

しかし、この予算案が国会での議論を経て修正されることはほとんどないのだ。

野党からは予算の修正点などをまとめた「組み替え動議」というものが出されることはあるが、それらは与党によって粛々と否決され、原案のまま予算案を可決するか否決するかだけが国会では問われることになる。

これは、各省庁と折衝して財務省がまとめあげた予算案を国会の議論に合わせて変えるとなると、政府与党の負担が大幅に増えることとなるため、多数を握る与党が原案のまま成立させることが慣習化していることから来ていると見られる。

それなら、何のために国会は存在し、予算について議論しているのか。