国会での答弁ではタブレットやノートPCは使えるが、スマートフォンは利用禁止となっている。フリージャーナリストの宮原健太さんは「国会は前例にとらわれていて、社会の変化に対応できていない。自分たちのルールすら満足に変えられないのに、世間のルールを変えることができるのか」という――。
参院予算委員会で答弁する河野太郎デジタル相=2023年11月28日午前、国会内
写真=時事通信フォト
参院予算委員会で答弁する河野太郎デジタル相=2023年11月28日午前、国会内

河野デジタル大臣の国会でのスマホ使用

一体いつの時代の規則なのかと驚いた人も多かったことだろう。

11月27日、参院予算委員会で河野太郎デジタル大臣がスマホを使って調べながら答弁をしようとしたところ、委員長から注意を受ける一幕があった。

国会の委員会ではスマホを含めた携帯電話の利用が禁止されている。

あまりに時代錯誤な規則は、この事案を機にネット上で疑問の声があがると共に、報道各社でもニュースとして取り上げられることとなった。

こうした事態を受けて、29日には自民党の小泉進次郎衆院議員ら5党1会派の国会議員が、国会のデジタルトランスフォーメーションについて議論する小委員会の設置を提案する記者会見を開いた。

会見では小泉氏が「世の中から見たら、全然国会のデジタル化が進んでいない。風穴を開けていく」と主張した。

タブレットやノートPCの使用は解禁されている

そもそも、なぜ国会の委員会でスマホの利用が禁止されているのか。

衆参両院の事務局によると、参議院では1995年に、衆議院では1996年に議員による議場内での携帯電話の使用などが禁止され、その規則が今も残っているという。

当時は携帯電話の機能が主に電話であり、審議中に電話をしたり、着信音を鳴らしてしまったりすることを防止するために規則が作られたようだ。

しかし、それから四半世紀以上が経ち、携帯電話の多くはスマホに形を変え、主な機能も電話からインターネットなどに移り変わって久しい。

当時の規則をそのまま残して、今もスマホの利用を禁止しているのはおかしいと思う人が大半だろう。

一方で、世の中で進むペーパーレス化の一端で、衆議院では2020年11月から、参議院では2022年3月からタブレットやノートパソコンの使用が解禁されている。

どうして今になってもスマホだけ取り残されてしまったのか。

永田町関係者は「スマホを解禁してしまうと、質疑や答弁中に通信アプリなどでメッセージを受信することができてしまう。そうなると、誰かの指示通りに質問したり、答えたりすることが可能となる。本当に質疑や答弁に立っている国会議員や大臣が自分の考えに基づいて発言しているのかが怪しくなり、審議に影響を与えかねない」と解説する。