定年後最大の不安は「仕事も収入もなくなること」

定年後の20年に対する何よりの不安は、「仕事も収入もなくなること」というのが50代の本音だと思います。

長く続いた不況の時代を、一度もいい思いをすることもなく耐え抜いてこれたのも、「とにかく正社員の職を放棄してはいけない」と身に染みて感じてきたからです。まして50代ともなれば身動きが取れませんから、辛くても職場にしがみつくしかありませんでした。

そして心の奥にはいつも、いまの仕事も収入も失ったらどうなるんだという不安が居座り続けてきました。

この不安が定年後の20年を考えるときにまず膨らんできます。

「好きなことができる」「望んでいた自由が手に入る」といった希望よりもまず、不安と向き合わざるを得ないのです。

「医者の資格を失ったらタクシーの運転手」と考える理由

そこでこの不安をまず振り切ってしまいましょう。

わたしは医者ですから、はっきり言っておカネになる資格を持っています。

でも、わたしは業界の批判を続けているので「もし何かの大きなトラブルを起こして、医者の資格を失ったり、奪われたら……」と考えるときがあります。そのときいつも頭に浮かぶのは「タクシーの運転手ならできるかな」ということです。

運転にはそこそこ自信がありますし、道もよく知っています。それどころか自分がタクシーに乗ろうとしてもなかなか空車が来ないときは、「反対車線を空車が走っているけど、なぜこっちを流さないのだろう?」と不思議になるときがあります。

医者ですから病院のタクシー乗り場を見て、「いまの時間なら遠距離の客をいくらでも拾えるのに」と思うこともあります。退院する患者にしろ外来の患者にしろ、みなさんタクシーを利用することが多いのです。

そういう光景を見ていると、つい「わたしだったら」と思ってしまうことがあります。

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