※本稿は、和田秀樹『50歳からの脳老化を防ぐ脱マンネリ思考』(マガジンハウス新書)の一部を再編集したものです。
「あと10年の我慢」と考えるのは止めよう
50代に残された会社人生はあと約10年です。再雇用で65歳まで働けたとしてもそうなります。
するとどうしても「あと10年の我慢」と考えたくなります。この発想はもう止めましょう。なぜならろくな答えは出てこないからです。
「いまから大きな成果や会社への貢献は望めない。せいぜい、失敗のないように、地味でも平常の業務を堅実にこなしていくしかない」
「体力も気力も落ちているから以前のような無理は利かない。でも最後の10年だから燃え尽きるつもりで頑張らなくちゃ」
どちらにしても辛くて味気ない10年になってしまいます。
数字に表れる成果だけでなく、日ごろの言動にも注意してハラスメントを疑われないように振る舞わなければなりません。部下を率いる立場の人はとくにそうでしょう。若手社員の仕事観や職場への帰属意識は50代とはずいぶん異なっていますから、自分たちの常識がまったく通用しない場面にしばしば遭遇します。
定時になったらさっさと退社、若手育成もしなくていい
出世をあきらめることも選択肢のひとつ。自分の仕事だけなら50代ともなればベテランですからそつなくこなせます。それだけならお安い御用でしょう。若手社員のサポートをしたり、相談相手になる必要もありません。定時になったらさっさと退社しましょう。
若手の育成も御免こうむりましょう。そのようなことは40代のキャリア社員に任せればいいのです。
すると、50代社員の存在感はなくなります。それこそが狙いです。「働かないおじさん(おばさん)」と言われようが「給料だけは二人前」と白眼視されようが一切気にしないことです。20代からずっと会社が不況に喘いでいるときに支えてきたのです。古い仕事観を押しつける上司の横暴にも耐えてきたのです。
存在感がなくなるのはむしろ好都合です。いるのかいないのかわからないくらいに存在感がなくなれば、「休まず、遅れず、働かず」を堂々と実行できます。職場に居るのはあなたの抜け殻で、実体は別のところにいます。
その「別のところ」とはどこか――を、まず考えてみましょう。