過去最大の防衛費増額は英断だった

【田村】財政法四条で縛っているのは赤字国債発行で、二度と戦争をさせないようにするため、国債発行を禁じて軍事費調達をさせないようにしたのです。憲法第九条とセットなのです。

したがっていま、防衛費を増額しようと思えば、無視できない存在です。

【石橋】2022年12月に、岸田文雄政権は2023年度から5年間で防衛費総額を43兆円程度にすることを閣議決定しました。

年間では最終年度の2027年度に8兆9000億円程度になると想定しており、2022年度当初予算5兆4000億円から1.6倍に積み増す、過去最大の増額です。

バイデン米大統領は、「私が説得した」と得意げに吹聴しましたが、これは大ぼらです。

防衛費増は岸田さんの英断だと思います。安倍さんが7月に凶弾に倒れたこともあり、多少は首相の自覚が出てきたのかな、と思っています。

防衛国債の発行は安倍元首相のアイデア

ともかく、2022年12月に、国の安全保障政策に関する「国家安全保障戦略」「国家防衛戦略」「防衛力整備計画」の三文書(防衛三文書、※2)が改訂され、防衛費の大幅な増額や反撃能力の保有を盛り込んだ新しい三文書になるわけです。

防衛三文書は自民党政務調査会でも大いに議論されるわけですが、防衛費の財源として国債を発行すべきだという声も上がり、財政法改正も議題となりました。

安倍さんは死の直前に「建設国債と同様に防衛国債を発行すべきだ」と言っていました。

つまりこの流れをつくったのは安倍さんだと言えます。

防衛費増額分の財源については、歳出改革や決算剰余金(*3)、そして国有財産売却益を充て、足らない部分を増税で賄うことになりました。

残念ながら、防衛国債を発行できるよう財政法を改正する、という流れにはなりませんでした。

*2 防衛三文書 「国家安全保障戦略」「国家防衛戦略」「防衛力整備計画」の三文書。2022年12月、政府は防衛費の大幅な増額や反撃能力の保有などを盛り込んだ、これら新たな防衛三文書を決定。防衛費を国内総生産(GDP)比で2パーセントに増やした。
*3 決算剰余金 予算措置はしたものの使い切れず、残ったおカネ。