なぜ自治体は早めに対応できなかったのか
国だけでなく、自治体もバス会社について考えなければいけない。
実は金剛バスの廃業は地元自治体に数カ月前に伝わっていたものの、補助金などを条件に慰留しているうちに時間が過ぎ、廃業が表面化したのは報道の3カ月前。
運休中の路線を含めた15路線のうち5路線については、コミュニティバスとして近鉄バス・南海バスに運行を委託。他の路線については再編を行って存続するものの、減便や区間廃止が多く生じる見込みだ。
後継路線を引き受ける南海バス・近鉄バスは、「急に言われても引き受け体制をとれない」という事態を呼んでおり、地元自治体に対して「なぜ早めに対応しなかったのか」という強い疑問が残る。
リ・デザイン会議は数年先を見すえた話だ。直近のバス会社の苦境に対してはどうすればいいのか。
各自治体には今回の「金剛バス・ショック」をせめてもの教訓として、非常事態に陥る前から「このバス会社、先行きが厳しくないか?」と早めに実態を調査すべきだ。
さらに、補助金を出すのではなく、実質の公営化という選択肢を考えても良いのではないか。
行き過ぎたバス路線の廃止は、地域社会の非効率化を生みかねない。
子育て中の家庭は学校に子供を送迎するという負担が増える。クルマも免許もない人々は街中に出ることができず、雇用や消費への影響という問題も起きる。移動手段の消滅によって団地や市街地の価値が下がってしまうこともあるだろう。「出て行こうにも、家が売れない」「人口減少で税収も減少し、道路や街灯が補修されない」などの事態も考えられる。
金剛バスのような突然死による混乱を避けるためにも、国・自治体が主導して、救済、再編など先手を打つ対応が求められる。
全国には、運転手不足の面でも財務面でも、金剛バスより苦境に立たされているバス会社は多くある。