人気テレビ番組にみるバス業界の改善点

金剛バスは国からの補助を得ていたものの、バスの沿線にある自治体は残りの赤字を埋める補助金の投入に消極的な姿勢をとっていた。メインの営業エリアである富田林市では「公営の農業公園へのバス路線への経費を一部補助(年度によって800万~1000万円弱)」したに過ぎない。

通勤や通学で比較的多くの人に利用されている路線があるにもかかわらず、10年ほど前から赤字に転落した。

2021年度の赤字額も7200万円にのぼり(関西テレビ「newsランナー」2023年9月12日放送)、運転手の離職を止められず、今回の「運転手不足による閉鎖」に至ったのだ。

路線バスの減便・廃止を止めるためには、単純な赤字補助にとどまらない「地域交通の再編」が必要だろう。いまの路線バスの在り方も、ムダが多い。

テレビ東京で放送しているテレビ番組「ローカル路線バス乗り継ぎの旅」を見た方はわかるかと思うが、地方のバス会社には、人が多い駅や市街地からほぼ誰も利用しないような県境まで走らせる路線を持っている。

乗客が多い「駅~市街地」と、一転して車内が寂しくなる「市街地~県境」は路線を分けるなど、営業面でのテコ入れや最適化が行われるべきだろう。

バス路線の再編・廃止が続くと、こういった後継も見られなくなるかもしれない。写真は大分県宇佐市仙人田での「大交北部バス」「亀の井バス」乗り継ぎ
筆者撮影
バス路線の再編・廃止が続くと、こういった光景も見られなくなるかもしれない。写真は大分県宇佐市仙人田での「大交北部バス」「亀の井バス」乗り継ぎ

国からの提案

国(国土交通省)は、この状況を座視しているわけではない。

補助金を含めた諸々の制度の不備を是正していくために、今年9月に「地域の公共交通リ・デザイン実現会議」が立ち上がった。

ここでは、鉄道、バス、タクシー、スクールバス、病院の送迎車など、地域交通を丸ごと巻き込み、一体経営するような再編を目指している。

例えば、「朝には大型バスが必要だけど、昼は乗客数人」という場合は、朝にスクールバスで使った小型のマイクロバスを昼間に回したり、予約制の「デマンドタクシー」を出したり、将来的にはライドシェアを折り込んだり、という選択肢が話し合われる。

また乗客の少ない区間のバス運行を見直すために、バスがUターンできる土地を購入し区間短縮を行うなど、攻めの再編もありそうだ。もちろん人材不足が解消されバス事業が持続可能となるように、担い手となる運転手への相応の支払いも議題になることは間違いない。

補助金について言えば、これまではバス路線単位で一律補助を行っていたが、事業見直し・再編が進むことで、利用実態がない末端区間などは廃止されやすくなる。

こういった路線は県境・自治体境に近い場合も多く、バス路線網の再構築とともに「ローカル路線バス乗り継ぎの旅」のような乗り継ぎが不可能になってしまう(もしくは数十km歩いてつなげる)かもしれない。

実現には国交省・厚労省・文科省などと自治体の連携が必要となる。省庁縦割りの壁を越えられず、プランが骨抜きにされる可能性は消えない。どのような形で再編が実現するのか、その推移を見守りたい。

神奈川県の「川向」バス停。経営が思わしくないバス会社は、設備の放置具合で分かる場合も
筆者撮影
大阪にある金剛バス「川向」バス停。経営が思わしくないバス会社は、設備の放置具合で分かる場合も