補助金頼みの体質

かつてドル箱だったバス路線は次々と廃止され、バスの利用者はこの50年で6割以上も減少している。国は採算が合わなくても一定の利用者があった路線を維持すべく、各バス会社に対する補塡ほてんを、路線単位の補助金という形で行うようになった。補助金の原資はわれわれの税金である。

国土交通省が定めた「地域公共交通確保維持改善事業」によると、国は地域交通における赤字路線のマイナスの半分を「欠損補助」することになっている(1日の利用者15人以上などの条件あり)。

残りのマイナス分は、バス会社が貸し切りバス・高速バス、車庫跡地を売却したスーパー・不動産賃貸などの事業で穴埋めする場合もあった。しかし、そういった副業を持たないバス会社は、地元自治体から最大2分の1の補助金を受け取り、生き延びてきた。市町村などが補助を行う場合も、基準は「国に準ずる」となる場合が多い(地域によって施策に差あり)。

国や自治体がとってきた補助制度は「赤字路線に対する一律の補助」であり、ちょっと止血する程度に過ぎない。また、この補助金は運転手の待遇の向上や福利厚生には使えないので、バス会社の赤字体質解消の根治にはつながらない。

ならばと、バス会社が運賃値上げや路線の大幅廃止など利益を出せる施策を取ろうにも、各自治体や住民団体などの強硬な反対でことごとく退けられてしまう。

さらに問題なのは、補助金を出す自治体は、外圧のような形で運転手の待遇悪化を伴うコストカットを迫る傾向にあることだ。

富田林駅前にある金剛バス本社
筆者撮影
富田林駅前にある金剛バス本社

補助制度の結末

実例を挙げよう。

首都圏のとある自治体では、市が主導するコミュニティバスを民間委託で運行する際に「バス事業の経費は人件費の比率が高すぎ。なので55歳以上の運転手を安価で再雇用して、低コストで市バスの運行を可能としました」と、鬼の首でも取ったかのようにアピール。

当時は「行政改革の成功例」「バス事業の先進的なコストカット事例」として美談扱いで全国に広まり、給料の安い高齢ドライバーの非正規雇用ならびに、若い運転手が雇われなくなるきっかけともなった。

とある政令指定都市では「市営バスの運転手の待遇が高すぎる」とやり玉にあげ、外部委託によって人材を流動化。かつ、勤め上げても待遇がなかなか上がらない給与体制に変更。こちらも多くの人々の支持を得た。

バス会社は運転士の待遇・労働環境を犠牲にしてまで、スポンサー化した自治体の要望に応えざるを得なかったのだ。

地域交通の担い手である運転手の待遇をコストカットの対象にし続けた結果、運転手の平均年齢は53歳まで上がり、その当時に働き盛りだった運転手は次々と定年退職。

各社とも新規採用を行えず、若手がすっぽり抜けたいびつな年齢構造と劣悪な労働環境のままで2024年問題への対応を迫られることになった。全国的にバス運転手が不足するのは当然の結果といえる。