「パニック売り」がさらなる急落を引き起こす

また、使う予定がないとしても、資産の大部分を運用してしまうと、心理的な負担も大きくなります。

人間の心理として、一時的な下落であったとしても、自分の資産が半分ほどに減ってしまったら、長期投資という考えが頭から抜け落ち、「今すぐ運用をやめないともっと下がってしまうかもしれない」と不安に駆られてしまうことがあります。

これがいわゆるパニック売り、狼狽売り、と言われる行動の原因です。感情や恐怖に反応する売却であり、この行動が更なる価格の急落を引き起こすとも言われています。

マサチューセッツ工科大学が65万人以上の個人証券口座からなる2003~2015年の「パニック売りの頻度・タイミング・期間」について調査したところ、興味深いデータが得られました。

パニック売りを行った投資家の58%は半年以内に投資を再開した一方、31%は二度とリスクのある資産にお金を投資することがなかった、ということです。

多くの場合大きな不況のあと、大きなリターンが得られますが、この31%の投資家は市場が暴落した後の市場で利益を得ることはできなかったのです。

こういった状況を防ぐために、市場がたとえ大きく下落したとしても長期投資を継続できる心理状況を維持するために、自身が安心できる金額は運用資金とは別に確保しておくことが必要です。

私の会社では、今後5年以内に使う可能性の資金はいくらぐらいかを考えていただくことで、その資金を「預金でなければならない資金」として運用してはいけないお金と定義しています。一方、5年以上使わないであろう資金は運用に回すことができるという考え方にもなるため、自分がいくら運用すればよいかが明確になる方法の1つとしてご検討ください。

図表=筆者作成

資産を分散させなければいけない理由

② 単一資産に集中して運用する

「卵は一つのカゴに盛るな」という格言をご存じの方も多いのではないでしょうか。

これは卵を一つのカゴに盛ると、そのカゴを落とした場合に全部の卵が割れてしまうが、複数のカゴに分けて卵を盛っておけば、そのうちの一つのカゴを落としても、他のカゴに盛った卵は割れずに済む」という有名な格言です。

投資の世界でも運用資産を分散するということがとても重要です。

単一の資産に偏って運用を行うと、その資産が上昇するときは大きなリターンを得られますが、下落したときに運用資産の全てが下落してしまうというリスクを抱えることになるのです。