英サン紙は、20ヤード(18メートル)以上の直線がないようにレイアウトされていると紹介している。曲がり角を多用することで、ショールーム内のさまざまな商品に目が行きやすくなる効果があるという。

フラットパックで価格を合理化

ショールームでこれぞという商品に出会ったなら、番号をメモしておき、最後に1階倉庫の指定された棚から商品をピックアップ。カートに乗せて自分でレジまで運ぶ。

トルコのイスタンブールにあるIKEAの店内(写真=Maurice Flesier/CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons

車で持ち帰れば最後にもう一仕事、名物となった六角レンチを片手に自分で商品を組み立てて完了だ。コンパクトな「フラットパック」で輸送費を削減し、多くの作業をセルフで行うことで価格を合理化するほか、自分で作った家具にはより愛着が生まれるともいわれる。

日本では北は仙台から南は福岡まで、12店舗のイケアストアが展開する。小型のシティショップ(都心型店舗)となっている渋谷・原宿・新宿を除く、9つの店舗で迷路型レイアウトが顧客を迎える。

イケアストアでは迷路の半ばで、スウェーデン名物のミートボールなどを提供するイケアレストランが用意されている。本場スウェーデンの文化を伝えることを大切にするIKEAだが、実はレストランを併設しているのには、文化面とは別に隠れた理由がある。

米CNNによると古くはIKEAは、巨大なショールームを歩くうちに顧客がお腹を空かせ、途中で帰ってしまう問題を抱えていた。中間地点の食事スポットでエネルギーを補給し、残りの店内も見てもらえるよう企図しているのだという。

なぜIKEAは迷路をやめたのか

「脱・迷路」のきっかけは、2015年頃から世界で導入されたシティショップの導入だった。日本でも2020年4月、IKEA原宿が初の東京都心型店舗としてオープンしている。

ブルームバーグは2018年1月、IKEAが都市部において小規模店舗の開設を進めており、記事作成時点で世界に24店舗ほど展開していると報じている。

記事で取り上げている2016年オープンのロンドンの都市型店舗の店舗面積は、わずか900m2だという。通常の店舗が2万5000m2ほどと広大なのに対し、約28分の1にすぎない。迷路型のショールームを設けるスペースは必然的に取ることができず、代わりに商品閲覧用のタッチスクリーンを設置した。

若者を中心に郊外の大型店舗への足が遠のくなか、都市部の小型店に設けたタッチスクリーンで注文を済ませ、後日配送またはピックアップで受け取る形式を広めたいねらいだ。