元大手企業部長、年収1500万円→時給1000円

50代の転職で間違いなく問われるのはスキルだ。『ミドルの転職』の水河慎太郎営業マネージャーはこう語る。

「役職よりも何ができるかが問われる。年齢が高い人ほどスキルが求められ、50代を採用したい企業はやってほしいことが明確に決まっており、それを実現できる人かどうかがチェックされる」

求人企業は中小企業やベンチャーが多いとのことだが、企業が求めるスキルに合致する人は年収が上がるケースが多く、「逆にこれができます、というスキルが言えない人は基本的に下がる。大企業の課長・部長であっても、組織の関係性で役職に就いた人は相対的に年収が高いが、これができると、スキルを明確に言えない人も基本的に下がる」と語る。

また、スキルも「50代の転職で一番多いのが管理部門系。中でも経理での転職が多く、人事・法務部門出身の人は年収が上がるケースが多い」と言う。

ところで、そもそも50代になってリスクの高い転職をしようとするのはなぜか。人によってさまざまな事情はあるだろうが、ひとつは50代半ばに訪れる「役職定年」がきっかけだ。

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例えば不動産で経理業務を担当していた57歳の男性は同業種の不動産業に転職。年収700万円から900万円にアップした。『エン転職』の体験レポートで転職動機について「57歳で役職離脱になった。年収は役職離脱前の半分となり、マネジメント業務はなくなったものの組織横断的な業務は残ったため仕事内容はそれほど変わらない。年収は半分で部下もいないのはどういうことかという空虚感を味わったこと、もう一花咲かせたいと思った」と語る。

役職定年に加えて、事業リストラによる希望退職者募集がきっかけになった人もいる。流通・小売業で事業企画職にあった52歳の男性は、前職と同じ年収800万円で介護福祉系の施設長・事務長として転職した。

「前職では55歳での役職定年制度があり、未だ学齢期の子供を抱えながら、その適用を3年後に控えていました。そのタイミングでコロナ禍を受けた大幅な事業縮小に伴う希望退職者募集があり、異なる業種へのキャリアチェンジと安定した収入の確保を目指して転職を決意しました」

前職の人材コンサルタントは「この5年の間に会社の事業形態が時代に合わなくなってきている企業を中心に希望退職で辞める人、あるいはM&Aのあおりを受けて事業の整理で辞める、倒産で辞めざるを得ない会社都合で退職する50代が増えている」と語る。ただし高額の割増退職金をもらって辞めた人ほど、転職に失敗する人が少なくないという。こんな事例を紹介する。

「大企業の製造業で年収1500万円もらっていた50代の元部長は、最初に年収1000万円で雇ってくれるところを探したが、100社受けても落ち続けた。失業期間も1年を過ぎ、だんだん焦ってきて年収目標も800万、700万円に下げてもどこも拾ってくれない。500万円で雇ってくれるところはあったが、さすがに前職の3分の1ではプライドが許さず、探し回ったが見つからず、失業2年後に見つかったのは時給1000円の駐車場の警備員だった。そんな人は珍しくない」