父と母がくれたもの

親から与えられたものはたくさんある、と伊藤さん。

「父は旅が好きで、もともとよく一緒に温泉に入っていたんです。銀行員だった父は、温泉につかりながら仕事での失敗談や人生訓をそれはたくさん聞かせてくれました。大人になってから“あのとき父が言っていたのはこれか!”と思うことが多々ありました」

母親からの影響も大きいという。

「僕が幼い頃のホームビデオを見返す機会があったのですが、旅行先などで母が『楽しい?』『これどう?』などと、たくさん問いかけをしてくれていたのが印象的で。問いかけをされたら自分で考えて意見を言わないといけないので、それを繰り返すことで何が好きで何が嫌いかなど、思考や価値観の軸が育っていったのだろうと思います」

自分への問いかけ、つまり自問自答を幼い頃から繰り返していた伊藤さん。自分のように悩んでいる子供がいたらどう声かけするか聞いた。

「好きなだけ悩めばいいと思います。僕が自問自答していたときは最終的に“なんで生きているんだろう”“なんで勉強するんだろう”“自分は何が好きで何が嫌いなんだろう”というような問いが出てきました。答えはその場で出さなくてよくて、問いが出てきたことが重要なんです」

問いは解決しなくてもいい、と伊藤さん。

「難しい本を読む中で解決した問いもありますが、本の中で理解できない部分はまた新たな問いとしてとっておける。考えて行き詰まったら問いを違う方向から投げかけるなどして自分と対話をするようにしています。AIに問いかけたら何が出てくるかわからないように、人間だって、まずは問いかけてみないと何と返答がくるかわかりません。出てきた答えにフィードバックを行うと性能が上がっていくところも似ています。だから子供にはどんどん自分に問いかけろと言いたいですね。そうするうちに、少しずつでも自分のしたいことや好きなことが見えてきて、主体性も育っていくと思うんです」

そして、問いかけは親自身も怠ってはいけないという。

「“子供がいい学校に行くとどう幸せになるのか?”“今子供にやらせていることは幸せにつながるのか?”などと問いかけてみるといいと思います。問いかけのいいところは、考えることで自分が選んだ選択肢に確信が持てるところです。子供と一緒に考えて『これだけ考えたんだからこの道は合ってるよね』と合意を形成できれば、親子にとって良い選択になるのかなと思います」

撮影=植田真紗美
Almondoのメンバーに聞いた伊藤さんの印象  出典=『プレジデントFamily2023秋号

松本悠秀さん Sales Engineer(写真左)
東京大学在学。松尾研究室のGCIで優秀賞を受賞し講師も務める。42Tokyoカリキュラムを日本最速で進める。

神田慶樹さん Biz Dev(左から2番目)
慶應義塾大学理工学部 物理情報工学科在学。2020年KBC SEEDsでYJ capital賞を受賞し、EdTech領域での起業を経験。

志田遥飛さん Algorithm Engineer(左から3番目)
鶴岡工業高等専門学校創造工学科在学。大規模事前学習や自動運転等の深層学習領域の研究に従事。

伊藤滉太さん Almondo 代表取締役
東京大学教養学部在学。高校在学時に東京大学松尾研究室主催のGCIで優秀賞受賞。大学入学後は、松尾研究室発AIスタートアップで営業・事業開発、松尾研究所で企業提案と共同研究に従事。2023年に起業

(文=土居雅美)
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