なぜ「5時間10分」を510にしてしまうのか

例題3
えりさんは、山道を5時間10分歩きました。
山をのぼるのに歩いた時間は、2時間50分です。
山をくだるのに歩いた時間は、何時間何分ですか。

▼誤答例
式 510−250=260
答え 3時間

▼正解(3年生の正答率 17.7%)
式 5時間10分−2時間50分=2時間20分
答え 2時間20分

この問題を解くには、二つのポイントがあります。「山道を歩いた時間」は、「山をのぼるのに歩く時間」と「山をくだるのに歩く時間」の合計であり、くだるのに歩いた時間を出すためには、ひき算をする必要がある、と正しく類推できること。そして、時間の単位が生きた知識となっていることです。

ところが、4年生で74%、5年生でも46%の子がこの問題を間違えました。

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ひき算をすることが正しく推論できず、「5時間10分+2時間50分」とたし算をしてしまう子もいました。

また、ひき算だとわかっても「510-250=260」といった式を立ててしまう子もいます。この子は、全体から部分を引けば残りが出る、という類推はできたのですが、基本的な時間の単位の理解ができていないのです。

5時間10分を510としているため、1時間は100分だと勘違いしているかのようですが、こういう誤答をする子も「1時間は何分?」と聞かれれば60分と答えられる場合が多い。

生きた知識となっていないため、知ってはいるものの、自由に使うことができないのです。

時間の単位で間違えてしまう子は、3年生で13%、5年生で18%もいました。5年生のほうが間違える子が増えているのが気になります。時間の単位が生きた知識となる経験がないため、習った直後よりも正答率が落ちているのです。

繰り下がりを避けて勝手に読み替える

ほかにこの問題の誤答で多かった例は、繰り下がりを回避して勝手な計算をしてしまうというものです。

典型的なのが「5時間10分-2時間50分=3時間40分」というもの。時間のほうは「5-2」で3として、分の計算は「10-50」ができないので、勝手に「50-10」と読み替えて計算してしまっているのです。

繰り下がりが必要で計算がしにくいから、恣意しい的に数字の順番を変えてしまう。計算力が不十分なうえに、数字についての理解が欠けていることも考えられます。

たし算・ひき算・かけ算・わり算の、計算の仕方は知っていても、互いの関係性や原理原則が身についていないのです。簡単な計算問題なら表面的な理解でも解けるかもしれません。ところが、文章題では、文章を解読するために思考の負荷が大きくなり計算に対応できないのです。

また、あとで見直せば気づくはずであることから、客観的に認知をするメタ認知能力も欠けていることがわかります。