「なぜ、うちの子は文章題だと解けないのか」。計算問題は大丈夫なのに、文章題だとわからない、間違えてしまうという子は多い。慶應義塾大学教授の今井むつみさんは「子供がつまずくのには原因がある。うちの子は苦手だからと決めつける前に、まずは、子供なりの理屈を知ることから始めるといい」という――。(後編/全2回)

※本稿は、『プレジデントFamily 算数が大得意になる 2023完全保存版』(プレジデントムック)の一部を再編集したものです。
前編:「間違いやすい文章題その1」から続く)

オレンジジュースをグラスに
写真=iStock.com/Hyrma
※写真はイメージです

意外とムズい? 小6の4割が間違えたジュースの問題

例題2
8人に4Lのジュースを等しく分けます。
1人分は何Lですか。

▼誤答例
式 8÷4=2
答え 2L

▼正解(6年生の正答率 56.7%)
式 4÷8=0.5
答え 0.5L(2分の1L)

これは6年生を対象にした2021年度「全国学力・学習状況調査」の算数で出された問題です。

式と答えを書くという形式の問題だったのですが、正しく、4÷8=0.5(もしくは2分の1)と解答できた子はわずか56.7%でした。

その一方で、8÷4と計算して間違えた子が36%もいたのです。

6年生でも3割以上が、「わり算」の意味を正確に理解できていないことになります。

これを間違えた子は、「(等しく分けるのだから)わり算だ」ということはわかったのでしょう。ところが「わり算は大きい数を小さい数で割る」という誤った思い込み(スキーマ)を持っていた可能性があります。

そこで深く考えずに、問題に出てきた数字のうち大きい8を4で割ってしまったのです。

同様に「かけ算は増えるもの」「わり算は減るもの」という思い込みをしている子が高学年でもいます。実際には、0.5など1未満の数を掛けると数は減りますが、自然数だけを対象としていた低学年のころのスキーマが強く身についているのです。

これらのスキーマを持っていることは、それまでの自分の経験を一般化できているわけで、ある意味賢いということもできます。実際に、低学年のうちは、かけ算をすれば答えは大きく、わり算をすれば答えは小さくなっていました。

しかし、小数・分数を習うと、これまでのルールと食い違い、混乱がおきます。それまでの思い込みが強く定着しているほど、新しい知識と関係づけて修正していくことが難しくなるのです。

大人に「正解」を教えられても頭に入らない

算数では、こういった「後だしジャンケン」のような、言葉の概念の修正・追加が多くあります。特に分数や割合など、それまでのスキーマを修正する必要がある学習については、長い目で見ましょう。大切なのは、子供が自分で気がつくこと。自分のスキーマにとらわれているうちは、正しい解き方を説明されても、ほとんど頭に入ってきません。

また、今の小学校の現場で、「これまでは大きい数を小さい数で割っていたけれど、これからは違うよ」といった、子供各人のスキーマを修正する指導は難しいでしょう。

家庭でできるとしたら、子供が気づくのをサポートしてやることです。自分で手を動かして、この例題のような問題に取り組むなかで「どうやら小さい数を大きい数で割ることもあるのだな」と気づくのが理想です。

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