家族カードも使用できなくなって支払いに追われた

さらに必要なのは、「カード会社」への連絡です。

我が家でメインに使っていたクレジットカードは竜ちゃんが本会員で、私は家族会員でしたので、紐づけされていた私のクレジットカードとETCカードも使用できなくなりました。

カード会社にはまだ連絡していませんでしたが、竜ちゃんが亡くなってから、忙しさに追われて、自分の家族カードも使えなくなることを考える余裕がありませんでした。

電気、ガス、水道代の公共料金などはクレジットカード払いに設定しているものも多かったので、契約者の名義変更と支払い方法の変更を行い、口座凍結で引き落としできなかった代金は、コンビニで支払いました。

そのため、何かしらの支払い用紙が毎日のように届き、「また支払わなきゃいけないのか……」と嫌になりそうでした。

忘れないうちに支払うというのを繰り返しているうちに、今、何のお金を支払っているのか、よくわからないようなときもありました。

クレジットカードは、ほかにデパートの外商部の家族カードがあり、そのカードも使用できなくなりました。デパートからすれば、頻繁に買い物をしていたわけではないので全然お得意様でもなんでもないのですが、「一家の主がいなくなると、残された者はただのオマケで、信用もなく、世間から放り出されてしまうのか……」と、少し寂しく感じたことを覚えてます。

携帯ショップの偶然の出会いで気合を入れ直す

また、竜ちゃんの「携帯電話の解約」と、私が使用している携帯も竜ちゃんの名義になっていましたので、名義と支払い方法を変更しなくてはなりませんでした。

これまで携帯を機種変更する際には、毎回2時間くらいかかっていたので、携帯ショップに行くことがストレスになり、竜ちゃんから携帯を買い替えたいと言われていたのに機種変更を先延ばしにしていたくらいでした。

ネットで予約した日時に、必要書類を持って携帯ショップに行ったところ、担当してくれた方が付けている名札が、ふと目に留まりました。

名札には、「鬼海」さんと書いてあります。なんと読むのか、「おにうみ」なのか、「おにかい」、もしくは「きかい」なのでしょうか。私にとっては、初めて目にする苗字で、これから自分が行く末を示しているかのように思いました。

「そうか、私はこれからひとりで、鬼のいる海さえも渡らないといけないのだな」

その方には申し訳ないのですが、その瞬間、脳裏に浮かんだのは、真っ暗な海の上、荒波の中におっかない顔の大きな鬼が私の乗った船を掴んで、大きく揺らしている光景でした。

「なにくそ、鬼のいる海になんて落ちないぞ。家族カードを取り上げられたことなんて取るに足らないこと。なんだったら実家にはお供の犬だっているじゃないか」

愛犬のモモのことを思い出し、「桃太郎」のように勇敢に前に進もうと、自分で自分を励ましました。