何度「書いて」と言っても書いてくれなかった遺言書

でも結婚直後、竜ちゃんから、「子どもはいらない、作らない」と宣言されていました。私としては、そういう大事なことは結婚する前に言ってほしかったのですが、子どもの話になるたび、竜ちゃんは「作らない」と、いつも頑なに言い切って、まったく考えようとしないのです。

「子どもを作らないのだったら、きちんと遺言書を書いてよね。私のほうが10歳年下だから、あとで私のほうが残る可能性が高いんだから」と、繰り返し伝えてきました。

遺言書
写真=iStock.com/takasuu
※写真はイメージです

いつも竜ちゃんは、「自分の財産は全部、ヒーチャンに渡したい」と言っていましたが、口頭ではなく、遺言書という形にしないと、法的に認めてもらえないことは誰もが知っていることです。

だからこそ、しつこいくらいに遺言書を書いてほしいとお願いしてきたのですが、結局は書いてくれませんでした。

相続については専門の知識が必要なので、弁護士さんに依頼して、きちんと法律に則って遺産分割を行いました。

結果的に96歳の義理のお母さんも、希望どおり相続でき、竜ちゃんの最後の親孝行となって、よかったかなと思っています。

なぜ子どもはいらないのか、話し合ったことはなかった

それにしても、なぜ竜ちゃんが「子どもを作らない」と言っていたのか、これという理由を挙げていたわけでもないので、今となってはさっぱりわかりません。

竜ちゃんの知り合いと食事をしたとき、急に何の脈絡もなく、「上島家はどっちが子どもはいらないと言うんですか?」と聞かれて、びっくりしたことがありました。

すぐに竜ちゃんが、「ヒーチャンだよね?」と言ったので、私が怒って険悪なムードになり、帰宅した途端、大喧嘩になってしまったのです。

「子どもを作らないと言ったのは、竜ちゃんだよね?」と、問い詰めましたが、竜ちゃんの「子どもを作らない」という方針は、このときも変わりませんでした。

竜ちゃんが頑なに子どもを持ちたがらなかった理由とは、何だったのでしょうか。その理由について、竜ちゃんと真剣に話し合ったことはありません。

毎日忙しくてなかなか機会がなかったのもありますが、夫婦の重要な課題は、本当はお互いのホンネをぶつけ合って、理解しておくべきだったと思います。

でも、竜ちゃんの仕事が順調で機嫌よく生活できたら、もうそれ以上のことを欲しがるのは、違うのではないかと思い、何でもかんでも手に入れることを望むことは止めようと自分に言い聞かせていました。