アフィリエイト業者の摘発は難易度が高い

ただし、これらアフィリエイト業者の摘発となると、決済代行業者の摘発よりも難易度が高い。アフィリエイト業者は海外オンラインカジノの業務の一部を手伝い、そこから報酬を獲得しているという点においては、海外オンラインカジノとほう助関係にあるのは間違いない。しかし、先述の通り海外オンラインカジノに対して国内法である刑法賭博罪の適用が不可能である限りは、この両者のほう助関係をもってアフィリエイト業者の罪を立証することがとても難しいのは2016年の摘発事案と同じ状態にある。

では今年の摘発のように国内の海外オンラインカジノ利用者を賭博罪の正犯としながら、そのほう助を行っているという構図でアフィリエイト事業者を摘発することができるかというと、実はそれもなかなか難しい。

海外オンラインカジノ利用者と決済代行業者のケースにおいてはその両者間に決済を仲介するという明確な契約関係が存在するが、利用者とアフィリエイト業者の間にはそのような明確な契約関係があるわけではない。アフィリエイト業者はあくまで、海外オンラインカジノとの間に送客契約を結んでいるのみの存在なのであり、この切り口から違法行為を立証するのは実はとても難易度が高いのだ。

ブロッキングは海外では主流

このようにアフィリエイト事業者への対応が難しいとなると、最後に考えられるのがブロッキング法制、もしくはリーチサイト規制と呼ばれる新法の制定による対策だ。ブロッキング法制とは、その名の通り国内から海外オンラインカジノへのインターネットアクセスそのものを遮断してしまう施策である。

実は、このような施策は諸外国においては非常に一般的である。2018年に一般社団法人日本ネットワークインフォメーションセンターによって実施された世界49カ国104名のインターネット専門家に対するアンケート調査では、自身が居住する国や地域でブロッキング法制が採用されていると答えた専門家は全体の71%、その中でカジノおよびギャンブル系サービスを対象としたブロッキングが導入されていると回答した専門家は全体の50%にも及んでいる。

ただし、ブロッキング法制を巡っては、わが国でも海賊版サイト対策を目的とした著作権法改正の論議過程においてその導入の検討が行われたが、憲法第21条第2項に定められた「通信の秘密」に抵触する可能性もあり、その制度導入にあたってはより慎重であるべきとする意見が主にIT業界から寄せられ、結果的に制度の実現には至らなかった。

「通信の秘密」を巡る論議は海外オンラインカジノを対象としたブロッキング法制の導入にあたっても基本的に同じ構図となり、その導入にあたっては再びIT業界から強い慎重論が寄せられる可能性が高い。

リーチサイト規制でオンラインカジノ対策を

そんなブロッキング法制の代替として、2020年の著作権法改正において提案されたのが、リーチサイト規制と呼ばれる施策である。リーチサイト規制とはブロッキング法制のようにインターネットアクセスそのものを遮断するものではないが、違法なコンテンツを提供する有害サイトに向けて、それらコンテンツが違法であることを知りながらリンク等を張り、利用者を誘導する行為を禁ずる制度である。

2020年に行われた著作権法の改正では、先に挙げられたブロッキング法制に対する根強い慎重論が存在したことから、その代替としてこのリーチサイト規制を条項化することで決着をした。この海賊版サイト対策としてのリーチサイト規制を、海外オンラインカジノ対策に当てはめるとするのなら、まさしく前出のアフィリエイト業者が利用者をオンラインカジノに向けて送客する行為そのものを規制する制度となるため、国内アフィリエイト業者の活動抑制として有効な対策になる可能性が高い。

実は現在、既に総務省内でこのような海外オンラインカジノ利用を抑制する新法制の検討が進められているといわれており、早期の実現が待ち望まれる状況だ。

国がようやくオンラインカジノ対策に本腰を上げた

以上が、わが国における海外オンラインカジノ利用対策の現状であるが、最後に告白をしておくと実は上記でご紹介したわが国で初めて海外オンラインカジノ利用の違法性の政府認識が示された2013年の質問主意書は、私と私の友人の渡邉雅之弁護士(三宅法律事務所)が当時、その提出を企画し、階猛事務所にお願いをして実現したものであった。

あれから数えて丸々10年、やっとわが国におけるオンラインカジノ対策が本格的に動き出したと思うと、非常に感慨深い。政府においては、ぜひこの勢いのまま各種対策を強化し、その撲滅に向かって邁進していただきたい。

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