オンラインカジノ利用者は正犯、代行業者はほう助犯
2016年の摘発は、海外オンラインカジノの運営者を賭博事犯の中心に置き、その事業者との間で賭博行為をした利用者と、そこに決済代行サービスの提供を行った業者を同時に摘発するものであった。しかし、そもそもわが国の刑法賭博罪は日本国の領域内にのみ適用される属地主義をとっていることから、海外オンラインカジノ運営者へその適用は行われない。
その結果、日本の法律で罰することのできない海外業者に対して犯罪捜査を行うことも難しくなり、証拠資料等の押収もできないことから、当然ながらそこに連なる国内利用者や決済代行業者の犯罪立証も難しくなる。そのような事情が結局2016年に発生し、後に物議を残すこととなる不起訴処分につながったわけだ。
一方、実は本年9月に発生した摘発はその2016年の摘発を教訓として、全く別の構図で賭博事犯の摘発を行ったものである。今回の摘発では、国内から海外のオンラインカジノにアクセスをして賭博を行っている利用者を賭博罪の正犯者、そして海外オンラインカジノとの出入金を仲介する業者である決済代行業者を、「オンラインカジノ利用者に決済代行手段を提供し、賭博をほう助した」従犯者(常習賭博ほう助)という形式で賭博事犯の構図を描いた摘発であった。
オンラインカジノの賭博は摘発リスクが非常に高い
この構図であれば、賭博事犯の中心にある海外オンラインカジノ利用者の賭博の実態さえ立証ができれば、その従犯となる決済代行業者との関係性を立証することも容易となる。また容疑者となる海外オンラインカジノ利用者も決済代行業者も、共に国内に存在していることから、捜査および証拠資料の差し押さえも容易である。
逆に言えば、今回の摘発が2016年の摘発と違って国内の男21人という利用者側の大量送検を前提としたものとなったのは、正犯となる国内のオンラインカジノ利用者の存在を確実に立証し、その先にある決済代行業者とのほう助関係の証明を確実にするためである。
今後、警察が引き続きこの構図で国内のオンラインカジノ事犯を摘発するとなると、決済代行業者と併せてオンラインカジノ利用者側の大量摘発がセットとなる可能性が高く、国内から海外のオンラインカジノにアクセスして賭博を行う者にとっては摘発リスクが格段に高まることとなるだろう。