2016年の摘発が残した「大きな課題」

政府による公式見解が示されたことによって起こったのが、2016年に発生した国内初めてとなるオンラインカジノ利用者の逮捕であった。当該摘発は千葉県警、および京都府警によって、海外オンラインカジノにアクセスし、金を賭けたとされた大阪府30代男性ら3人が単純賭博容疑で、決済代行業者が常習賭博容疑で併せて摘発を受けたものである。

この国内初の海外オンラインカジノ利用者の逮捕は、わが国のオンラインカジノ対策においては非常に大きなマイルストンとなったものの、一方で未来にとても大きな課題を残すことになる。

手錠をかけられた男性の手
写真=iStock.com/kuppa_rock
※写真はイメージです

2016年の摘発では逮捕者の内のほとんどの者が罪を認め、略式起訴で罰金刑を受けたものの、うち1名が否認した結果、検察の判断により不起訴処分とされた。このことにより、ネット上では「海外オンラインカジノ利用は罪を認めなければ検察も起訴ができない」はもとより、「それ故、今後警察は海外オンラインカジノ利用者の摘発はできない」などとする言説が一気に広まった。

当時の不起訴処分がどのような検察判断によって行われたのかは開示されていないが、少なくともこの2016年に行われた2度の摘発を最後に、わが国では海外オンラインカジノ利用者の摘発事案が途絶えてしまった。そのこともあって、少なくともネット上では「海外オンラインカジノ利用は罰することができない(=グレーゾーン)」という論が再び勢力を盛り返すこととなってしまった。

結果的に、それ以降もわが国での違法なオンラインカジノ利用は減少することはなく、むしろコロナ禍における「消費のうちごもり」化も相まって、その利用はさらに拡大し続けてきたのが実態である。

2016年の摘発と今回の摘発は大きく異なる

そして、2016年以来久しぶりに行われた海外オンラインカジノ利用者に対する本格的な大規模摘発(※1)が冒頭でご紹介した2つの事犯である。特に9月27日に報じられたオンラインカジノプレーヤー21人が書類送検された事犯は、史上最大規模の海外オンラインカジノ事犯となったわけだが、実は2016年に行われた摘発との間には摘発の前提として描かれた「犯罪実態の構図」において大きな違いが存在した。

※1:この間特殊な形の小規模な摘発は存在していた。