接種は大幅に遅れ、医師たちは大儲け

実際のところ、医師であれば注射が上手というわけでもない。新型コロナワクチンは普通の静脈注射でなく、筋肉注射だから医師にしかできないという人もいたが、筋肉注射は医師でも実施したことがない人が多く、むしろ、静脈注射より簡単という意見もある。

問診といったって、定型的だからマークシートでも十分なくらいで、疑義があるときだけ、医師にリモートで指示を仰げば十分だし、アナフィラキシーと呼ばれるアレルギー反応が稀に起きても、救急車が到着するまでの対応手順は定型的なものだから、薬剤師でも対処可能だった。

しかし、医師にこだわったために接種が大幅に遅れ、ついには、本来の業務がほかにある自衛隊のお医者さんを超法規的に動員してやっと軌道に乗った。

接種業務に従事した医師たちは、自分の診療所でもそうだが、大型の集団接種会場では、一日に10万円といった高額の報酬を受け取った。

「ダメ医者」ほどワクチン接種を独占したい

さらなる問題は、医師がワクチン接種を担当することで、本来の診療が手薄になったことだ。とくに在宅の患者に関して、医師が不可欠という状態になったときに、ワクチン接種による人手不足で投入できなかったのは痛かった。

あの当時は、医師も診療を通じてコロナ感染するリスクが高く、より安全なワクチン接種に従事することで、「新型コロナへの対応に協力しています」という顔をしていた医師も一定数いたと推察する。

なぜ、ワクチン接種業務において「医師独占」にこだわったか。それは、一部の医師がインフルエンザワクチンなどへも波及することを恐れたからだ。

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そもそも、現場の医師に聞くと、「別にワクチン接種を医師独占にしてほしいというわけでない」という人も多い。ところが、患者が少ない医療機関や高齢の医師などにとっては、ワクチン接種は数少ないドル箱だし、最新の医療知識や設備もいらないから好都合だ。

こういった「ダメ医者」ほど、医師会長選挙といった医師会の政治的活動に熱心で、選挙結果を大きく左右する。私は、日本の開業医制度というものは優れものだと評価している。大病院の勤務医よりも、むしろ彼らこそコストパフォーマンスのいい仕事をしていて日本の医療の宝だと言えるし、医師会長は立派な医者が多いのだが、「ダメ医者」の利益代表にならざるを得ないのである。