看護師や薬剤師の裁量をもっと認めるべき

リモート(オンライン)診療もなかなか拡大できない。ITに弱い「ダメ医者」が嫌うのだ。この問題は、小泉純一郎内閣のときに「構造改革特区制度」を使って少し風穴が開いたが、必要なのは抜本的な見直しで、海外でやっていることは、原則として認めるべきだ。

欧米では簡易なオンライン診療アプリが普及し、とくにコロナ禍では活躍したし、中国では電話ボックスのような部屋に入って症状などを入力すると適切な専門医につながって診察を受けられる設備までが普及している。

近年、再診には導入されつつあるが、むしろ、遠隔地の専門医に相談する場合など初診こそリモート診療で前さばき的な診察をしたほうが効率的だ。

看護師の所管業務拡大(ナースプラクティショナー、NP)も増えてはいるが、医師への事後報告で十分な業務は多いので、もっと思い切って拡大してもよいだろう。入院すると看護師がなんでも「先生に聞きます」と言うのが鬱陶しいという思いをした人は多いだろう。

薬剤師の役割も拡大している一方、疑義照会といって、医師の処方に疑義があるときは医師に都度相談しなくてはならない。しかし、中には「ジェネリック薬品か正規品か」「錠剤か粉薬か」など、医師に相談せずとも変更すればいいケースが含まれており、医師からも、時間を取られて面倒だという声がある。薬剤師が単独で判断できてこそ真の合理化だ。

患者に処方箋の説明をしている女性医師
写真=iStock.com/RRice1981
※写真はイメージです

「医師独占」だからこそ不便なことは多い

医薬品の購入で医師の承認が必要な理由としては、安全上の問題もあるが、保険会計が膨れながらないようにという配慮もある。それなら、患者の自己負担であれば医師の承認なしに購入できるという医薬品をもっと拡大するのはどうだろうか。とくにかかりつけ医の休診日や出先で、医師であればどう判断するか分かりきっているのに、その日のうちに薬が入手できず困ることも多い。

介護の分野では、家族であればOKだが、介護士やヘルパーは医師の監督の下でないとだめだというものが多い。かつては、たんの吸引がそうだったが、2012年から一定の研修を受けたらよいことになった。

ただ、こうした研修は面倒だという意見もあるし、点滴、浣腸なども含めて家族に許されているものは、もっと簡易に門戸を広げたほうが合理的だ。それができないから、やたら入院させられるとか、介護施設でも医療法人の経営でないとできることが限られるといった問題が起きてしまう。

健康診断も同じだ。多くの人が朝から病院で順番待ちをしているが、健康診断に限らず、検査そのものも、その解析も医師である必要がないものが多い。なぜ視力検査を病院でしなくてはならないか、私は理解できない。