──スカイアクティブは、ブランド構築に有効か。
山内 他社にない先進技術なので、ブランドになります。マツダは世界シェア2%の会社。頑張って将来200万台売っても、1億台市場の2%です。世の中の10%に向けて「高くとも欲しい車」をつくり、結果として2%をとる。更地から始めている新興国では、ブランドづくりが当たってきています。赤い「マツダ6」は、中国沿岸部で人気です。新興国で現地生産が増えれば、いずれ中間所得層にも展開していきます。
──メキシコ工場を建設中だが、メキシコからブラジル向けの輸出制限枠が設定された。
山内 メキシコで生産した完成車を、ブラジルで売るという当初の計画は白紙にします。メキシコは100万台の市場ですが、北米、中南米、欧州を合わせれば、約4000万台の規模になる。欧州へも展開でき、ブラジルにしてもノックダウン生産で進出する方法はあります。メキシコから日本への逆輸入も視野に入れます。
──フィアットなど提携については。
山内 フィアットとのスポーツカーの協業はぜひ成功させたい。アライアンスの話はたくさんあります。ただし、資本提携を最初から狙っているわけではない。
リストラは二度とやらない
──人事政策で変化はあるか。
山内 私は10年間、人事担当でした。フォード時代には、米国的人事システムをすべて取り入れた。01年には大リストラを実施しましたが、マツダはこれから先リストラを二度としません。最終的には、人が決め手になると思います。海外の工場や販社で働く外国人を含め、「マツダで働きたい」と考える人を大切にする会社であり続けたい。
2012年に入り、事務・販売系社員3000人のうちの1000人を、新興国部門に配置することを決めたところ、どんどんと手が挙がっています。中国、メキシコ、ASEAN、ロシアで働きます。
──希望者は若手が多いのか。
山内 年齢や性別は関係ありません。特徴的なのは国内の営業スタッフが多い点。本来は英語が苦手な人たちですが、言語はどうやら関係ない。国内で店長やディーラー経営の経験をもっているので、新興国ですぐに販売店管理ができる。新興国に赴任した彼らは喜々として仕事をしています。
技術者は、経営感覚をもち全体を見渡せる人が求められていく。ただし、マツダでは昔ながらの豪傑が新技術を生んでいくでしょうけど。
※すべて雑誌掲載当時
山内 孝
1945年生まれ。慶應義塾大学商学部卒。67年東洋工業(現マツダ)入社。96年取締役。2008年代表取締役社長兼最高経営責任者(CEO)。10年より現職。