苦しい経営の中で決断したメキシコ進出

日本車メーカーの進出が相次ぐメキシコで、マツダが新工場で世界戦略小型車「マツダ3(日本名アクセラ)」の本格量産を開始した。社長時代にメキシコでの現地生産を決断した山内孝会長に、進出の狙いと新工場の役割を聞いた。
マツダ会長 山内 孝氏
――2月下旬、本格稼働したメキシコ新工場では開所式が盛大に行われ、式典にはメキシコ大統領も出席されました。

【山内】メキシコのエンリケ・ペーニャ・ニエト大統領とは昨年4月、日本を訪れた際にもお目にかかり、そのときには、メキシコ政府が外国籍の人に授与する勲章としては最高栄誉とされる「アギラ・アステカ勲章」を拝受しました。今回は多忙の中、開所式に出席していただき、身に余る光栄です。大統領は若くて行動力があり、工場視察では記念すべき量産第一号車の「マツダ3」を自ら運転され、従業員と気さくに握手や写真撮影をされていました。新工場で働く従業員たちにとっては大きな励みになったと思います。

――開所式で山内会長は、この新工場には「3つの大きな使命」があると強調されました。

【山内】3つの使命とは第一に「良き企業市民」となる。第二に最も重要なグローバル戦略拠点として社運を懸けた構造改革を成功させる。第三に革新的な新世代技術「SKYACTIV」を世界に広めて地球環境保全に貢献していくことです。なかでも「良き企業市民」を第一の使命としたのは、民間企業である以上、収益をあげる経営をしなければ持続的な成長はできませんが、その前提として進出先の国や地域の発展にしっかりと貢献することが大切だと考えたからです。メキシコ新工場も経済・雇用はもちろんのこと、マツダミュージアムの開設、サッカーグラウンドなどの多目的スポーツ施設の開放など地域社会との交流を深めていきます。また、働く従業員にとつても大きな誇りを持てる工場を目指していきます。