護送船団方式で守る大手タクシー会社の利益

――都内で営業するエコシステムは、消費税が増税した4月1日を機に、初乗り運賃を650円から610円に“値下げ”した。大手タクシー会社が初乗り運賃を730円にするなかでの異例の戦略だ。プレジデント誌は中村秀樹社長を直撃した。
エコシステム社長 中村秀樹氏

2004年9月、小泉純一郎内閣での規制緩和政策のもと、わがエコシステムは、タクシー業界に参入しました。その翌年には初乗り500円のワンコインタクシーとして、革新的なITシステムの導入や環境に配慮した経営によって、東京のタクシー業界で準大手の規模にまで成長しました。今では批判の多い竹中構造改革ですが、わが社のドライバーの平均月収50万3793円(2013年12月実績)や業界最高水準の1台あたりの売り上げを考えれば、改革のすべてが失敗ではないことがわかっていただけるはずです。

国土交通省が運賃を定めるなかで、どうやって低価格を実現させてきたかについては、カラクリがあります。

それは、認可運賃、いわゆる“下限割れ運賃”と呼ばれるものです。当社はワンコインタクシーや、3月31日までは初乗り650円・深夜割り増しなしという認可運賃で営業していました。これは、国土交通省が定める運賃の幅を下回る運賃でも、適正な原価、適正な利潤が出ていることを条件に、毎年申請して個別に認可されるものです。大手タクシー会社は、経営が苦しいため、この認可運賃での営業ができませんでした。

今回、4月1日をきっかけに、これまでの認可運賃での営業ができなくなりました。しかし、私は利益を顧客に還元していくという強い信念から、6つの対抗策を実行しています。

1. 迎車料金をゼロ円に。(運賃を巡り国を提訴した)MKタクシーは640円、多くの会社で400円の迎車料金を無料に。
2. 初乗りを値下げして610円に。国土交通省が消費者に配慮し、通常2キロメートルの初乗り距離を短くして運賃を抑える制度を導入したことはあまり知られていませんが、私どもはそれを利用しました。
3. 深夜・早朝料金の2割増しなし。
4. 料金が9000円を超えたら1割引き。
5. 1万2000円を超えたらさらに25%割引き。
6. 最低価格帯での定額運賃(羽田空港、成田空港、ディズニーランド)の実施です。

安くする方法が減ったとはいえ、ないわけではない。