6月に日本損害保険協会の新会長に就任した櫻田謙悟氏(損害保険ジャパン社長)。国内市場の頭打ちが予想される中で、どのように業界を導いていくのか。
――業界として、どのような課題に取り組んでいくのか。
日本損害保険協会会長 櫻田謙悟氏

【櫻田】とくに重要なのが不正請求の防止だ。具体的には、業界として不正請求についてのデータを集め、不正請求した当該本人だけでなく関連する業者や周囲との相関関係を浮き彫りにするシステムを運用している。データが厚くなれば、「これは組織的なものだ」とわかってくるだろう。ただ、世界と比べると、日本はデータを取れる項目が少なく、官との連携も少ない。アメリカでは契約者の犯罪歴まで取れるが、日本は契約者や社会がそれを了解するかという問題がある。諸外国をベンチマーキングしながら、どのようなデータを集めればいいのかということを引き続き考えていきたい。

――日本は少子高齢化が進んでいる。高齢社会への対応は?

【櫻田】保険契約のわかりやすさをさらに向上させる必要がある。すでに協会のコンプライアンスガイドラインの中にお年寄り対応に関するものがあるが、いまそれを独立させて強化しようとしている。また、契約の説明をする募集人の役割も大きい。今国会で保険業法が改正されたが、柱の一つが募集人の品質向上だった。いま金融庁からの命令で実態調査をしているが、それを踏まえてどのような改善ができるのか、これから関係各方面と相談して検討していく。

――損害保険の契約は内容が細かく、わかりにくいという指摘もある。

【櫻田】字が小さい、読むべきものが多すぎる、わかっているのに何度も同じ説明を受けるなど、いろいろとご指摘をいただく。これらの課題に対して、各社は一生懸命改善に努めてきた。しかし、字を大きくしたり絵を入れても、劇的な効果は見られないのが実情だ。やはり重要なのは募集人の品質だ。「読んでおいてください」ではなく、「じつはこういうことなのです」とわかりやすく説明できれば、お客様のご理解も深まるはずだ。そこから先は各社の戦略だが、ICTの活用に期待している。ICTを導入すれば、機械ができるところは機械に任せられる。そのかわり、たとえばお客様の口調や息遣いからご理解の程度を読み取るなど、本来人間にしかできない部分に集中できるのではないか。