日々膨大に生成・記録される多種多様なビッグデータ。その存在は、個々の仕事やライフスタイルから、社会の仕組みやシステム、果ては国力に至るまで多大な影響を与えつつある。我々はビッグデータの時代にいかに向き合うべきか。話題の書の著者が説く。
――ビッグデータは情報の産業革命ともいわれ、世の中を根本から変えようとしています。社会はよい方向へと向かうのでしょうか。
ケネス・クキエ氏

【クキエ】世の中はよくなります。例えば、未熟児が感染するか否かがビッグデータによって予測可能になりました。感染を示すわかりやすい指標は、呼吸や心拍数といったバイタルサインではなく、安定したときにわかるんですね。なぜそうなるかはわからないけれど、相関関係で把握できる。答えがわかれば理由は要らない。これはビッグデータがもたらす大きな変化の一つです。ただし、データの透明度や責任を担保するために、政府や公共機関が介入し、ビッグデータをコントロールしていく必要もあるでしょう。帳簿をつけるために会計士が必要なように、私は、ビッグデータを監視するアルゴリズミストという新しい職業をつくるべきだと考えています。

――ビッグデータの時代で勝者といえるのは大手と小規模の企業であり、中堅企業は割を食うとされています。

【クキエ】2009年の金融危機では、大企業と全く関係のない小さな会社はクレジットクランチ(信用収縮)に追い込まれました。生き延びたのは、大きな会社と関係のある会社だけ。これと全く同じことがビッグデータの時代にもいえます。つまりミディアムサイズの会社は規模がないので勝ちようがない。活路があるとすれば、子会社をつくるときにファイナンスを身内同士で行うように、中規模の会社が連合のような仕組みをつくり、互いのデータをシェアすることでしょう。