今年9月、マツダが新型SUV「CX-60」を発売する。マーケティング/ブランディングコンサルタントの山崎明さんは「ドイツ車と同じFRと直列6気筒を採用したことで、マツダ車の課題だった走りが見違えるものになる可能性がある。またパワーと燃費の両立は、ドイツプレミアムブランドをはるかに超える水準を達成している」という。
パワーと燃費の両立を実現したCX-60。注目は直列6気筒ディーゼルエンジンモデルか。写真はCX-60 XD-HYBRID Premium Modern。
写真提供=マツダ
パワーと燃費の両立を実現したCX-60。注目は直列6気筒ディーゼルエンジンモデルか。写真はCX-60 XD-HYBRID Premium Modern。

マツダはBMWを超えられるか

私は4年前の2018年、『マツダがBMWを超える日』という本を書いた。

マツダは2010年から「魂動デザイン」を推進していて、欧州プレミアムブランドのようなデザインの一貫性・統一性を持たせ、内外装の品質レベルを大きく向上させようとしていた。いわば欧州プレミアムブランドのような戦略に、日本メーカーの中で唯一挑戦したわけだ。

高圧縮を実現し燃焼効率を上げたガソリンエンジン、逆に低圧縮で後処理なしに規制をクリアできるディーゼルエンジンなど、独自性の高い技術(総称してSKYACTIV)も次々導入された。そしてそれが成果としても表れ、各モデルの販売単価は大きく上昇し、それまでの大幅値引きによる販売から高付加価値モデルを中心とした販売になり、ブランドイメージも大きく変化していた。

この動きを見て、同じく運転の楽しさをブランド価値のコアに置くBMWと比肩するブランドに育っていく可能性があるのではないかと思い、このようなタイトルとしたのである。

プレミアムブランド化の反面、走行性能に課題あり

2018年以降に発売されたモデルもそのデザインレベル、内外装の仕上げレベルはさらに向上し、少なくともショールームで見る限りはドイツプレミアムブランドの同車格モデルと比べても勝るとも劣らないレベルに達していた。

最近の最量販モデルは中型SUVのCX-5で、しかも高品質な内装を備え400万円クラスの最上級グレードであるエクスクルーシブモードが最も売れ筋となっていて、輸入車からの乗り換えも増えているらしい。高価なディーゼルモデルのロイヤルティー(マツダからマツダへの乗り換え)も8割を越えている。

マツダブランドのプレミアムブランド化は着実に進んでいるように見受けられる。しかし肝心の走りという意味では、最新モデルでもレベルアップは果たしていたもののまだBMWのレベルには達していない、というのが私の正直な印象だった。