仲間を巻き込むために「大義」を共有する

このプロセスは、社会デザイン発想における「巻込」の段階です。改めてポイントを整理します。

巻込とは、当事者の声を起点に、ともに世の中に問いかける仲間を見つけ、賛同の輪を次々と広げる仕組みです。ここでの仲間とは、オノマトペラボに参加していただいた医療と言語の専門家の先生方です。疼痛治療の権威、医療コミュニケーションの専門家、医療用語の専門家、オノマトペの研究者にご協力をいただきました。

ここで重要となるのが、「大義」です。専門家の先生にも共感していただけるゴールを提示しなければ、協力は望めません。そこで私たちは、「慢性的な見えない痛みを持つ患者さんと医師のコミュニケーションが円滑に行われるようになれば、患者さんの適切な治療につなげることができる」という共通のゴール、すなわち大義を提示しました。

専門家の皆さんは快諾してくださり、オノマトペラボが発足しました。ここでようやく私たちは、「痛みのオノマトペ」研究のスタートラインに着いたのです。

どの疾患にも一番使われているのは「ズキズキ」

オノマトペラボでは、医療と言語の可能性を追求する調査や研究を行いました。

日本語には、およそ2万から3万のオノマトペが存在すると言われています。その中で、よく使われるオノマトペは約1390語。さらにそこから痛みを表現するオノマトペを徹底的に抽出する作業から始めました。

痛みのオノマトペを抽出したら、実際に痛みを持つ人がどのようにオノマトペで表現しているかを調査し、オノマトペと疾患のつながりを分析します。神経の痛みを持つ患者さん8183人に対して、「今感じている痛みを、オノマトペで表現してください」とアンケートをとったのです。このデータを、医療領域と言語領域の先生に監修していただきながら整理すると、図表1のようになりました。

痛みの種類と疾患ごとに、痛みのオノマトペの出現割合順位をまとめました。例えば群発頭痛の場合、最も使われる痛みのオノマトペは、「ガンガン」、2番目は「ズキズキ」、3番目は「ウズウズ」となりました。帯状疱疹後神経痛は、1番目に「チクチク」、2番目に「ズキズキ」、3番目に「ピリピリ」。

写真=iStock.com/byryo
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