「ビリビリ」「チクチク」のほうが共有しやすい

「電気が走るような痛み」「針で刺されるような痛み」という比喩表現のほか、「ビリビリする痛みがある」「胸のあたりがチクチクする」などと伝えるのではないでしょうか。このように物事の状態や動きを表す擬態語(ビリビリ、チクチクなど)や、音を言葉で表した擬音語(ドカン、ガシャンなど)を総称して「オノマトペ」と言います。

なぜ痛みを伝えるときにオノマトペが使われるのかというと、単純に伝えやすいからです。特に日本人同士の場合、「共通認識としてわかってもらえる」と感じている人がたくさんいます。

また私たちは、何となく痛みの種類によって無意識にオノマトペを使い分けています。特に見えない感覚を共有する場合、聞き手である医師は、相手が無意識に表現する言葉から症状を把握しなければなりません。この「痛みの種類によってオノマトペを使い分ける」というあたりに、コミュニケーションの課題を解決するヒントがあるのでは? と着目しました。ここが、今回のプロジェクトの発端です。

「痛みのオノマトペ」を医療現場で広めるために

では、社会デザイン発想から「提唱」を考えてみます。提唱とは、企業と社会の多数がともに目指す理想の社会、新しい「あたりまえ」です。先ほど立てた問いに対する「答え」に当たるものです。ここを構想したうえで、新しい「あたりまえ」を社会に浸透させていくための仕組みをデザインします。

理想の社会(=答え)は、慢性的な痛みを持つ患者さんが、医師と上手にコミュニケーションをとることができ、適切な治療を受けられる社会です。

この答えを浸透させるには、患者さんと医師がコミュニケーションをとる中でどこに行き違いがあるのか、伝わりにくいところがあるのかを明確にしなければなりません。そのうえで、両者における「共通言語」を提示することが必要です。私たちは、患者さんと医師の共通言語として、痛みを表現する「オノマトペ」が最適解のヒントになるのではないかと考えました。

では、この「痛みのオノマトペ」を、実際の医療現場で活用できるようにするためには、どうすればいいのでしょうか。

私たちは最初に、このプロジェクトの座組みを考え、「医療」と「言語」という異分野の専門家たちに協力を仰ぎました。

患者さんと医師のコミュニケーションにおいて、オノマトペによる痛みの表現を活用することは可能なのか。可能である場合、医療現場のコミュニケーションをスムーズにするために、どういった活用方法が有効なのか。医療と言語の可能性を見い出すために、専門家とともに調査や研究に着手する必要があると考えたのです。