痛みが医師にちゃんと伝わっていない
同調査によると、「治療に不満がある」(45.7%)、「病院の変更経験あり」(65.4%)と答えた人が目立ちました。治療に不満があって病院を転々としている人や、途中で治療を止めてしまう人も多くいらっしゃいました。実際に直接話を伺った人たちからも、「痛みを伝えて対処してもらっても、あまり症状が改善しなかった」「医師に症状を話しても、あまり伝わらなかった」という声が上がりました。
つまり、患者さんの見えない痛みが上手に医師に伝わらず、適切な治療を受ける機会を逃してあきらめてしまうケースが多いのではないか――。私たちは、この点に注目したのです。
痛みには、大きく分けて2つの種類があります。
1つは、骨折や切り傷、火傷などによって組織が傷ついて生じる炎症の痛みで、「侵害受容性疼痛」と呼ばれるもの。もう1つは、何らかの原因によって感覚神経が傷害されて生じる痛みで「神経障害性疼痛」というものです。
後者の痛みは、傷のように外から見えないので、「年をとったら関節痛があっても仕方がない」「なんとなく痛むが、怪我ではないし、治療するものでもないだろう」などと思われてしまい、患者さん自身が病気と認識しないケースが少なくありません。
問題解決のために「問い」を立ててみる
このようなケースを含め、神経の痛みの可能性がある人は、日本国内で慢性の痛みを抱える人のうち4人に1人いるという調査結果があります(2012年わが国における慢性疼痛および神経障害性疼痛に関する大規模調査より)。つまり、この疾患の可能性がある人は国内におよそ660万人以上いることになるのです。
神経の痛みという悩みを抱えているにもかかわらず、治療をあきらめてしまっている人たちがたくさんいる。そのような方々に医療機関を受診し適切な治療を受けられるようにするにはどうすればいいのか。ここが課題であると考えました。
ここで社会デザイン発想によって、「問い」を立ててみましょう。
問いを立てるには、次のようなプロセスを踏みます。
・ひとりの声にも耳を傾ける
・企業が持つ力や意思を確認する
・未来を想定する
これら4つの要素から真に取り組むべき「キザシ・課題=問い」を発見していきます。
さっそく、このプロジェクトにおける問いを考えていきましょう。