健康食品は本当に健康にいいのか。食文化研究家の畑中三応子さんは「健康食品の世界には疑似科学がはびこっている。『膝に効く』とされるグルコサミンも経口摂取ではなんの効果もない」という――。

※本稿は、畑中三応子『熱狂と欲望のヘルシーフード 「体にいいもの」にハマる日本人』(WEDGE)の一部を再編集したものです。

膝の痛みに苦しむ男性
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「カラオケと柿の種はガンに効く」疑似科学と食品の結びつき

健康食品は、以前から疑似科学のパラダイスだった。1990年代からの健康ブームでますますエスカレートし、「カラオケと柿の種はガンに効く」(『週刊現代』1999年9月11日号)などという突飛な説まで登場するようになった。カラオケはナチュラルキラー細胞を25%活性化し、柿の種の着色料にはがん抑制効果があることを医学、薬学の専門家が説く特集記事である。

カラオケと柿の種が実はがんの特効薬だったという話は読んで楽しいし、実際にがんを治そうとしてカラオケに通いつめ、柿の種を食べまくる患者もいないだろうから、実害は少なかったろう。

この手の疑似科学を、あまりにもバカバカしいものとして多くの科学者は無視してきた。しかし、2000年代になるとテレビ番組で大きく取り上げられたり、大手メーカーの宣伝材料に使われたり、学校の授業に採用されたりと、社会に大きな影響を与えるようになってきた。インターネットの普及も、いかがわしい疑似科学が広がるのに大きく寄与している。そんな状況に科学者や科学ジャーナリストが、トンデモと笑っているだけではすまされない、もう見過ごせないと声を上げはじめた。