※本稿は、和田秀樹『頭がいい人、悪い人の健康法』(PHP新書)を一部抜粋・編集したものです。
「肉食は身体に悪い」は日本人には当てはまらない
読者のみなさんのなかには、歳をとったら肉は控え目にして、野菜中心の食事にするのが健康にいいと思っている方がいるかもしれません。長年にわたって肉食は体に悪いとやかましくいわれてきたため、これは半ば“常識”といえるくらい広まっています。
でも、これは、欧米人の健康法であって、日本人には当てはまりません。というのも、肉類をたくさん食べて肥満が多い欧米では、多くの国で死因の1位が心疾患だからです。
肉類を多食していると、動脈の壁にコレステロールが溜まって動脈硬化となり(これは現在では否定されている学説です)、血圧が上がり、血管が詰まりやすくなって心筋梗塞のリスクが高くなる――そう考えられてきたため、欧米の医師たちは、「肉を食べすぎてはいけない」と指導してきたわけです。
すなわち、心疾患で死ぬ国の健康法です。
日本でも「メタボリックシンドローム」(通称「メタボ」)が不健康の象徴のように思われています。ご存じのとおり、メタボとは内臓脂肪が蓄積することによって、肥満症、高血圧、高血糖、脂質異常などが引き起こされることで、肥満のなかでもとくに動脈硬化が進みやすい状態です。
心疾患の予防は「がんリスク」を高める
「メタボにならないようにしましょう」という呼びかけの目標は、動脈硬化を遅らせて心筋梗塞などの心疾患を減らすことにあります。
一方、日本は、がんで死ぬ国です。毎年、厚生労働省が発表する「人口動態統計」によると、日本人の死因の第1位は「がん」で、2022年の統計では約25パーセントの人ががんで亡くなっています。心疾患は約15パーセントとがんの6割程度ですが、急性心筋梗塞に限れば、その12倍以上の人ががんで亡くなっているのです。
それなのに、肉を食べすぎるのは体に悪いから減らそうとか、太りすぎはよくないからやせようという欧米型の健康法が、そのまま移入されているわけです。
「がんの予防にはならなくても、心疾患の予防になっているのでいいのでは?」
「太りすぎは健康によくないのでは?」
と思っている人もいるかもしれませんが、それは違います。心疾患の予防が、がんのリスクを高めているのです。
疾病構造の違いも考えず、日本人にそのまま当てはめようとすると、さまざまな弊害があることを知っておく必要があります。