※本稿は、和田秀樹『頭がいい人、悪い人の健康法』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。
薬を飲まないと本当に病気になるのか
たとえば、血圧が高い患者さんに、医師はよくこんな言い方で薬を飲ませようとします。
「ちゃんと薬を飲まないと脳卒中になるよ。脳卒中で死ぬよ」
「飲んでたら大丈夫だからね」
脅したりなだめたりしながら、きちんと服用させようとするのですが、こうした言葉にどのくらい意味があるのでしょうか。
アメリカで、血圧が160mmHgくらいで、薬を飲んだ人と飲まない人を集めて6年後の状態を調べた有名な研究があります。かなり大規模な調査で、エビデンスのしっかりした研究とされるものです。
これによると、薬を飲まない人は10パーセントが脳卒中になっていましたが、飲んだ人では6パーセントでした。この数字から「有効である」とされたわけですが、医師がもし、「飲まないと脳卒中になるよ」と言っていたとしましょう。
薬を飲まない人の90パーセントは、脳卒中になっていないことになります。飲まずに脳卒中になった10パーセントの人は、運が悪かった人といえそうです。
薬を飲むと、94パーセントは脳卒中にならないですみ、かかった人は6パーセントに減っていますが、薬を飲んでも脳卒中になって、もっと運の悪い人が6パーセントもいるのです。
飲まなくても90パーセントの人が脳卒中になっていないのですから、「飲まなかったら脳卒中になるよ」というのは詐欺商法に近いといってもいいでしょう。また、飲んでいても6パーセントは脳卒中になるのですから、「飲んでいたら大丈夫」と言うのも同じく詐欺的といえるでしょう。
このくらいの数字で「有効である」と効果が認められているわけで、「薬を飲まず、かつ運の悪い人」との差がもっと小さい薬はいくらでもあります。
医師の“脅し”を鵜呑みにする必要はありません。そもそも薬は、体調をよくするために飲むものです。異常となった検査数値を正常に戻すために飲むものではありません。
処方された薬で、だるさやめまいといった症状があったら、遠慮せずに、医師にはっきり伝えましょう。