小学校の道徳授業の教材になった「水からの伝言」の問題

トンデモの一例が「水からの伝言」。水に「ありがとう」などのよい言葉をかけたり音楽を聴かせたりすると、凍らせたとき美しい樹枝状結晶ができるのに対し、「ばかやろう」などの悪い言葉をかけた場合は結晶ができないというものだ。

水は無生物だから言葉や音楽に反応しないのは常識以前の常識で、荒唐無稽な疑似科学なのだが、なんと全国の小学校で道徳授業の教材に使われた。水は言葉の影響を受けることが実験で確かめられた→人体のほとんどは水でできている→言葉は体内の水に影響を与える→友人にはよい言葉を使いましょう、という筋書きだったという。理科の授業でなくても看過できないと、科学者がいっせいに批判した。

疑似科学によるニセ医学になると、被害はもっと深刻だ。もっとも危険なのが、がんは食事療法や放置療法で治るとするケースである。がんのように命に関わる病気ではないが、アトピー性皮膚炎の標準治療であるステロイド外用薬の使用をかたくなに忌避し、奇跡の効能をうたった高額のサプリメントやクリーム、ある種の水や入浴剤で治そうとして、逆にひどく悪化させた例も多い。ステロイドの危険性を煽って代替治療に勧誘する商法は「アトピービジネス」と呼ばれ、ニセ医療の典型のひとつである。

グルコサミン商品が甲殻アレルギー症状を引き起こす

人気の高い健康食品では、ひざ関節の痛みをやわらげるとうたうグルコサミンとコンドロイチン、お肌が潤うとうたうコラーゲン、ダイエット・美容・健康に万能効果をうたう酵素は、すべて疑似科学とされる。

グルコサミンとコンドロイチンが人の軟骨に含まれているのは事実だが、外から摂取しても体内で分解されて、ひざ関節の成分になることはありえない。それ以前に、口から摂取しただけで体内での合成が変わるのなら、人の体は摂取したものがそのまま組織の一部になってしまう。多くのグルコサミン商品はエビとカニの殻が原料のため、甲殻類アレルギーの人が知らずに摂取し、逆に健康被害を起こすことも少なくない。

コラーゲンも同様だ。加齢とともに肌のコラーゲンが失われていくのは確かだが、コラーゲンをいくら食べても、肌のコラーゲンは増えない。髪の毛が薄くなったからといって、髪の毛を食べても効果がないのと同じ原理である。酵素も口から摂取すると消化されてアミノ酸に分解されて吸収され、体内で活性を保たないことは科学の常識だそうだ。コラーゲンたっぷりの料理を食べたあと、お肌がつるつるになったと感じるのは、錯覚というわけだ。ちょっと残念。