なぜ人はあやしげな理論にたやすくだまされてしまうのか

健康食品や代替医療を試す前に、それが疑似科学かどうかファクトチェックするのには、明治大学科学コミュニケーション研究所が運営する「疑似科学を科学的に考えるサイトGijika.com」が役に立つ。

畑中三応子『熱狂と欲望のヘルシーフード 「体にいいもの」にハマる日本人』(WEDGE)
畑中三応子『熱狂と欲望のヘルシーフード 「体にいいもの」にハマる日本人』(WEDGE)

「疑似科学的と思われる主張」の科学性の度合いの評価を通して、ちまたに溢れるフェイクを的確に見抜く科学リテラシーが身につくように構成されている。記述があまりにも素っ気ない国立健康・栄養研究所の「『健康食品』の安全性・有効性情報」より読み物としてもおもしろい。

それにしても、人はどうして疑似科学に惹きつけられてしまうのか。科学リテラシー、認知科学などを専門に研究する明治大学科学コミュニケーション学部教授の石川幹人は、人々があやしげな理論に簡単にだまされる理由を進化心理学からこう説明している。

まず前提として、人類は進化の過程で同じ共同体の人間がいうことを疑わず、信じたほうが生存戦略として有利だったことから本来、身近な人を信じやすい生き物。だから科学的な根拠よりも「○○さんが使っている」のほうを信用してしまう。健康食品の広告に利用者の声が載せられるのはそのためだ。

自分の信じていることを裏付ける証拠に目が向く「確証バイアス」

また、人間は自分の信じていることと矛盾する証拠を無視したり、批判的な声や事実に耳を傾けないだけでなく、自分の信じていることを裏付ける事例や証拠にばかり目を向け、認知する傾向がある。逆に、自分にとって都合の悪いことは忘れてしまう。これを「確証バイアス」といい、疑似科学が社会に広がる要因になっている。

理科教育の影響も大きいそうだ。日本の理科の授業は、仮説を立てて実験することより、結果を学ぶことに重点が置かれてきた。そのため多くの人が「科学は正しい」と思い込んでいる。とくに物事を疑うことに慣れていない、いわゆる学歴エリートの人ほど疑似科学をうのみにしがちだという。