戦前から存在する古典的なニセ医学も復権

最近はやりのものでは、水素水がある。タレントの藤原紀香が、結婚式の引き出物に水素生成器を配ったことでも有名になった。体を酸化させる活性酸素を除去して老化を防ぐ、ダイエットと美肌効果があるといわれるが、科学的根拠は実証されていない。毒にも薬にもならない、ただの水の可能性もあるが人気は堅調で、日本分子状水素普及促進協会が関連商品の認証も行っている。

水を飲む女性
写真=iStock.com/Yurii Yarema
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毒になりそうなのが、ひところ話題になった「血液クレンジング」である。静脈から血液を抜き、オゾンを混ぜて体内に戻すというもので、アトピー性皮膚炎からがんなどの難病まで、万病に効くとうたう。オゾンを混合すると、血液が鮮やかな赤色になって、血液がクレンジングされたように錯覚させるという。オゾンを使った療法は戦前から存在する古典的な疑似科学で、米FDA(アメリカ食品医薬品局)はオゾンの医療用使用を禁止しているそうだが、日本では自由診療として行われている。1回数万円と高額だ。

「グルテンフリーが健康によい」と実証したデータはない

アメリカで大ブームになり、日本でも実践者が増えつつある「グルテンフリー」はどうだろう。小麦グルテンは日本では麩の原料になりマクロビオティックではグルテンミートを植物性のたんぱく源として利用する。そのグルテンが、突如として体と頭のあらゆる不調を招く元凶になってしまった。世界のグルテンフリー市場は拡大の一途で、2024年には約100億米ドルに達する見込みだそうだ。

ところが、腸の免疫疾患であるセリアック病患者と小麦アレルギーを持つ人、グルテン過敏症の人以外に、グルテンフリーが健康に好影響があると実証されたデータはない。むしろ、むやみにグルテンフリーを行うと小麦に含まれるビタミンB群や鉄などのミネラル類、食物繊維が不足する恐れがある。

米が主食の日本ではアメリカのような爆発的な流行はないだろうし、このブームに乗って米粉消費を促進しようとする動きがあり、日本の食料自給率向上にとっては好都合だが、あらゆる人に対して「グルテンフリーは体によい」が疑似科学なのは確かなようだ。