アウトサイダーだから成功できる
――これから会ってみたいベンチャー企業経営者はいますか?
孫 中国、ロシア、インドといったところにいるんじゃないのかな。まだ社会の仕組みが未整備なのに素手で這い上がってきている経営者がいるでしょう。そういう人には会って、話をしてみたい。あとは韓国です。韓国にはバイタリティのあるベンチャー企業家がいると聞いています。
我々の業界だと現在、グーグル、マイスペースといった会社が話題になっているでしょう。そういった新進気鋭の若い経営者に会うと非常に魅力的だし、参考になります。
柳井 孫さんはそうおっしゃるけれど、僕はベンチャー経営者に会いたいと思ったことはありません。なぜなら俗に言うベンチャー経営者の99%はいい加減ですし、金銭感覚のズレた人もいる……。本当の意味のベンチャー企業家なんてほんの少しだけですよ。
僕自身もベンチャー企業家と言われるより小売業の経営者と呼ばれたい。小売業のなかでしっかりした会社だと評価されたい。僕らの仕事は日々、売り場に立って、一生懸命に売ることです。毎日が闘いといっていい。いい加減な仕事をしたらすぐに脱落してしまう。小売りの世界で最終的に勝っている企業を見てみると、そうした厳しさに打ち勝った会社だけ。セブン─イレブン・ジャパンでもウォルマートでもそう。地道に仕事をしているところしか残らない。
孫 小売りや製造業は農耕民族みたいな性格があるかもしれません。対してインターネットの世界は狩猟民族的なところがある。ある日、突然、パソコン1台を肩から提げてきた若者が業界を席巻することもありうるのです。だから、私としては常にフィールドを眺めてチャンスの芽を探しておかなくてはならない。チャンスを見つけたら素早く飛びかかって事業にする。レーダーで探査していないと、一瞬のうちに抜き去られてしまう業界です。