若い社員に、「君は経営者になりたいか?」とたずねると、たいていは「ハイ! なりたいです!」と答えます。ところが、そう言う彼らが経営のことを知っているかというと、それは大きな疑問ですね。この本の中(42ページ)で、ジェニーン氏は「本を読むときは、始めから終わりへと読む。ビジネスの経営はそれとまったく逆だ。終わりから始めて、そこへ到達するためにできる限りのことをするのだ」と言っていますが、経営者になるためには、経営とは何かを知り、そのためには何をすべきかを考え、それを確実に実行しなければなりません。では、経営者とは何か? その明確な答えが、この本の中にあるのではないでしょうか。

僕自身、本書の原典である『プロフェッショナルマネジャー』と出会って初めて、“経営とは目標から逆算して、その目標に到達するために考えられる限りのことをいいと思う順から実行していくことである”ということを学びました。そして、「僕が今までやってきた経営は違う」「僕の経営は甘い」「経営するとはこれだ」と思わざるをえませんでした。創業当時、経営とは何かを知らなかった私は、1日1冊、毎日のように多くの経営書を読み続けていましたが、これほどの衝撃を受けた本は、この『プロフェッショナルマネジャー』だけでした。

その当時、「わが社を今までにない革新的な企業にしたい」という夢を持ち、みなに語り始めました。そして1991年に、父から譲り受けた小郡商事をファーストリテイリングという社名に変更し、当時29店舗だったユニクロを本格的に全国にチェーン展開する。そして毎年30店舗ずつ出店し、3年後に100店舗を超えたらそこで株式公開を目指す、と本部社員を集めて宣言したのです。94年には宣言どおり、広島証券取引所に上場を果たしました。

それまでの僕は、「何かをゼロから始めて一つひとつ形にしていくことが経営だ」と考えていました。しかし、どんな努力も目的地が決まっていなければ、それは“経営”ではなく、単なる“作業”なのです。若いみなさんがこの本を読まれることで、「次に自分がやること」が見えてくるはずです。そしてそれこそが、“経営する!”ということなのです。

僕が今日、経営者としてやっていけるのは、
『プロフェッショナルマネジャー』から多くのことを学んだからです。
いや、全人生で一番学んだ本は何か?と問われても、
この一冊に間違いありません!

2010年冬 ファーストリテイリング会長兼社長 柳井 正

(撮影=大沢尚芳)
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